夢中夢行脚 / アゲハ蝶 4
死体を発見し 数日が経った
あの日 参考人として、取調べ 調書を受けたのは
そこから 2、3時間
すっかり、日が暮れてしまい その日は何も出来なかった
取り調べを一頻り受けたあと 気づいたことがある
発見した死体の肌に 紫陽花の花が付く
いや、巣食う と言うのか 肌から生えてたようにも思う
自分が遺体に近づくと 飛び去ってしまったが傍を蝶々が舞っていた事。
見落としはあるかもしれないが
人の死体には そうそう出会す事が無い
また、それが衝撃だった為に 覚えてしまった。
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後日、報道ニュースで知った遺体
その遺体の男性が
自分が、この街に来た日
喫茶店で トルコライスを食事していた歳上の男性だった事。
また
噂には、尾ひれがつくものなのか
様々な話が聞こえる中
記憶に残った 話によれば
遺体は 頭部を 深く裂傷していた事
また、不思議な事に どのように摘出されたか不可解だが
損傷に対して 頭部の形は崩れないまま前頭葉が無かった事
そして、肌の表面に鱗のように紫陽花が咲いていた事。
などが、聞こえてき
発見時 冷静を欠いてた 自分の記憶と重なった。
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奇怪な事件は町の空気を
水の桶に 黒の水彩を一滴落としたように
ゆらゆら、もやもやと
静かな不安を拡げたように思う。
少し 空気に当てられてしまうのが嫌になり塞ぎ込んだまま
考えが錯綜しつつも いまいち、晴れない気持ちは
部屋で 寝返って天井を見るしか無かった。
どーにもこうにもな と
ひんやりとした 弁柄を見つめ雨の音を聴いていた。
溜息か、深呼吸か 同じくらいの吐息が
部屋に溶け
重く、どこか少し 穴が空いたような気持ちのまま
重い、重い と、うんざりしながら
気怠い腕で 窓を開けた。
中庭を見下ろせば
紫陽花が小雨を滴らせ 気丈に咲いていた。
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こうしていてもな
と、思い
雨が 弱くなったら 出掛ける事にした。
雨が上がり 虹が出ている
宿から少し離れた 山に見晴らしのいい神社があるようで
この街の景観を、眺めてみる目的もあり
山を登ることにした
と、同時に後悔もした。
階段が長すぎる.....
とは言え 参道の木々が見せる緑の鮮やかさと
町中では味わえない
少し ひんやりとした湿度が心地よく
神社までの階段を登っていた。
神社に、着いて その組木作りを堪能し
出掛けてみてよかったな
と思った頃
座っていたベンチの背に
手袋を見つけた
拾って わかりやすい所に置いておこうかと思ったら
持ち上げた時の重さに違和感があり
その膨らみ方は 中に、入ってる
それを感じた
風が吹き抜けた.....
なにやら、変な感じだ
森や、階段の方を見るも何もなく いつも通りだ
いつの間にか、手にしていた 手袋も無くしていたし
かすかな耳鳴りが 耳障りで
少し気分が悪い。
宿に戻ろう.....
と思いながら 参道に向かう時
水溜まりに 瞳、瞳孔が映っていた.......
反射的に 空を見ると
空 一面が 目 になって こちらを見ていた。
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