夢中夢行脚 / アゲハ蝶 3

この町には、紫陽花が多い

例の 棚田にも連れてきて頂いたが

そこから見える 田畑と 海が作る地平線に
夕日が溶ける 風の涼しい場所だった

振り返れば 紫陽花

その、およそ 160辺りの身長を越すような咲き方には 最早、惚れ惚れするような 花の開き方をしていて

度々、なぜ、こんなに背が高いのか気になっていたが

そう言う 夢なのかもな と思い
違和感を抱かなくなった頃だ。


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宿に利用してる旅館の窓を開け 少しばかり
ボーッとしていると どうやら、蛍が飛んでるようで


この町は、水が綺麗なのかもな..... と思った。


水か。なんて、事を思いながら
不動産業で働いてる方が 我々の業界は水曜日が休日が多いです 色んな事を、水に流す みたいに。

と言ってた事なんかを思い出した。


・背丈程の紫陽花
・目と、指
・記憶喪失
・蝶々

どれもが、断片的だ......。


と、思っていたら
「○様、失礼します お風呂の準備ができました」

「お、これはこれは 忝ない 早速、頂きます」

「ごゆっくりどうぞ。」

と、仲居さんから 襖越しに声を頂いた。

そこで、ふと 質問をしてみた。

「すいません、この町は 紫陽花の花が多いですね」

すると、仲居さん
「ええ、かれこれ 12、3年くらいでしょうか いきなり、町を紫陽花が覆うようになりまして....」

12、3年.....

「よく、蝶も見掛けるのですが 不思議な町ですね。」

「そうですねぇ 蝶もいて、蛍もいる この町が、賑わっていた頃には あまり見かけなかったのですが ここ数年は よく見かけますし その評判を聴いた 昆虫採集が趣味の方や 若い方が よくいらしてくれます。

昨今の異常気象もあるのか
たまに、季節外れな時期に 紫陽花を見掛けたりもして 考え方によっては年中 紫陽花が咲いてまして

その不思議な部分が 魅力になっているのか
度々、お客様がいらっしゃいます

以前のように、と言われたら 町の活気も変わってしまいましたが いまは、そちらの魅力の方に力を向けて 町を大事にしてる印象があります。」

と、世間話を交えながら 一緒に階段を降り


湯船に浸かった。

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宿から数メートル先
廃業した古い銭湯から
二股を左に少し

点滅信号から 真っ直ぐ

午後17時20分に見つかった 死体のそば
扉に 書いてあった文字だ

住宅街から 少し離れた一軒家
造り、としては 昭和から平成にかけて
多く見掛けた

芝生にスプリンクラー 蛇口があり
雨戸にサッシの使われた 庭付きの家

犬小屋があるが 犬はいなく、所々
ベニヤだろか? 木目がささくれている


人? これが、何を意味するかはわからないが

すくなくとも、意味はありそうだ

たまたまか? その、白い扉に
指で書かれた文字が
引っ掛かった。

入口 新聞受けには 様々なチラシが回収されることなく 溜まり 少し色すら焦ていた

この人物は、この家の住人ではない?

時間は、まだ、そんなに経ってない?のか?

死体に見覚えのある気もするが 一先ず、警察に通報した。

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