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タクシードライバー

俺はその日の深夜も車を忙しく走らせていた。俺はタクシードライバー。このタクシーの運転手という仕事を始めたのも、なりたくてなった訳ではなく、自分は運転免許証を持っていて、手軽で稼げる仕事は何かないかと探している時にたまたま目に止まったのがタクシーのドライバーだったからだ。始めた頃は慣れない道にメチャクチャ戸惑っていたが、一年も経つとすっかり道にも慣れて卒なく仕事をこなせるようになっていた。その雨の日の深夜も俺は国道沿いに忙しく車を走らせていた。すると雨の中だというのに、傘もささずに立って車を待っている男が手を上げて来たので、俺はその男の前で車を止めた。お客の男は車に入ってくるなり「目的地はどこでもいい。とにかく車を出してくれ。」と言って来た。俺は「目的地も言わずに車を出してくれとは一体どうゆうことだ?」とは思ったものの何分お客さんが言うことなので、車を走らせた。俺は「お客さん、おっしゃる通りに車を走らせましたけど、目的地って無いんですか?言ってもらわないと何処をどう走っていいものか全然分かりませんよ。」と言うと、お客の男は「目的地か、、。」と腕組みしながら考え込み「そうだ海だ。海にでも行ってくれ。」と言った。そこで俺は海へ向かって走り始めた。俺は割と人好きのする性格で、知らないお客さんと会話することをタクシードライバーの唯一の楽しみにしていた。そこでその日もお客に話しかけた。「お客さん、この寒い冬の日に海へ行くなんて珍しいですね。何か船に乗る予定でもあるんですか?」と尋ねると、男は「船か。船で海の真ん中まで行けば入水して死ねるかもな、、。」とつぶやいた。
俺は焦って「まさか自殺するために海へ行ってくれって言っている訳じゃないでしょうね!」と聞くと.

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