使う形と「回数」の話

まず使う形についてですが、一昨年から去年まで将棋をしていた時は、居飛車側で銀を57(53)に持って行く形をずっと使っていました。

将棋の戦型ではなく「戦法※1」には、「尖った形※2」と「丸い形※3」があると思いますが、この中央に銀を持って行く居飛車は、相手に応じてどちらも指す戦法となると思います。

※1ここでの「戦法」というのは、細分化され得る「戦型」のどれをどう選んで組み合わせて総体的な恰好を取るか?という、文字通りの作戦法を指します。

※2尖った形とはとにかく攻めに主体を置いたもので、戦型でいうとそれこそ棒銀や早繰り銀や右四間などが該当し、棋風でいうと、既存の棋士だと天野宗歩や升田幸三九段や谷川名人などの棋風が代表例として挙がるのではないかと思います。

※3丸い形とは、相手の出方を広範囲で手広く受け止めるような指し方で、戦型でいうとツノ銀中飛車やノーマル四間飛車、右玉などもそれに含まれるでしょうか。既存の棋士の棋風的には、大山名人や森安九段や以前の永瀬王座の将棋などが典型に挙がると思います。

今回使っているこの形に関しては「角換わりの研究を避けるために使っている」と、地元の新聞紙で観戦記者の方から断言口調で書かれていたのですが、とんでもないです。

角換わりで良く出現する腰掛銀、つまり47(63)銀の形に比べると、調べなければならない形の間口はこちらの方が圧倒的に広いです。(無論、こちらの方が戦法として優れている、という意味ではありません念のため)
角を交換する変化も実質避けられないルートとして存在しており、腰掛銀に比べて5筋の歩を突いているため角打ちの隙も生じやすいですし、その他の形でも基本的に玉を固める将棋にはならない事がほとんどなので、実際的には非常に負担が多い形です。

歴史をたどっても、木村義雄名人が全盛期だった昭和初期までは盛んに指されていた形ですが、そこから持ち時間のルール変更から、塚田九段、升田九段が積極的に用いて闘い、木村名人も途中からは腰掛銀の研究を行うようになられた…という話があるぐらいですから、本質的に持ち時間の短い勝負には合ってないのだと思います。それ以降、大山名人や中原名人以外の棋士で、57銀型を積極的に採用していた棋士はあまり存じません。具体的には、対矢倉の「中原流急戦」や、対振り飛車への「5筋位取り」など、プロでも大山・中原以降では敬遠されがちだった形です。

実際やってみて、とにかく玉を堅められず、常に自分一方が全体のバランスに気を使う将棋になりがちで、中終盤に関しても、仕掛けが非常に解りにくい(変化の岐路が多くしかも自分から動かなければ局面が硬直し模様負けとなるような場面で、仕掛けて良いのか悪いのかの判断を明確につけなければならない)、終盤も非常に薄い形となり、頓死が増えたり、次の一手問題のような攻防の着手が唯一の正解だったり、長手数の詰みが発生しがちだったりと、目先のゲームに勝つ上ではほとんど選ぶべきではない要素に満ち満ちています。

しかし、20年前に流行っていた玉を固める指し方に対しても、現在流行しているAIっぽい指し方(中住まいなど)を相手にしても、明確に悪くなるという訳でもない。

何でこの形にこだわり始めたかというと、対局相手、盤面全体の掌握と、自分自身の隙を一部も見せてはいけないという状況を常に要求されるような感じになるので、「将棋を通じて自分の精神的な隙を炙り出し克服する」という、まあ将棋をやる上での私の個人的なテーマみたいなものには、ピッタリ適合するのです。

また、やればやるほど自分の中で特定の形に対しての対策が立ちやすい、というのもあります。そのため特定の得意形を確立するまで将棋をやり込んだような強い人と、やればやるほどにどんどん相手を吸収して行くような恰好になるため、最初負けが続いてもやるほどにこちらの技量が向上して行く感覚を得やすいように感じました。結果、全てが自分にとっての学びとなり、どんな相手と将棋を指すのでも喜んで応じられるような気構えを得ることが出来たのです。

まあ、将棋をあくまで趣味として取り組む立場としては、これはあまり褒められたことではないんですが…(将棋がますます面白くなってしまって止まらなくなるという)

それはさておき、間口の広い形である以上、経験の積み重ね、実際に将棋を指す回数の増長、というのが、非常に大事となる形でありながら、前回述べていた過去のスタンスだと、それがなかなか実現できません。なので今回、短時間の持ち時間での上達に挑むことで、どういう変化が起きるのか、非常に楽しみだったりします。

しつこいですが将棋はついやり過ぎてしまうのでほどほどで止めながらやろうと思います。(この記事書いてるだけでも時間忘れちゃうからねえ。)

自分ルールとしては、まあ2分切れ負けを中心にやるので、1日多くても30局まで…2連敗したら、その日はどれだけもっとやりたくても終わり、過去の失敗棋譜の一人感想戦をする、という感じでやっていきます。

その反省内容についてはこちらで公開し、有料機能も使って真剣な内容にしていきたいと思っています。

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