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【エッセイ】ラスボス的紙類:親に嫌われていると腹落ちしたら、片付けることができました


 紙類。やりたくなかった。
 何故なら、書類関係はどれが重要なのかよくわからなくて「とりあえず」しまっていたから。
 学校関係、子どものプリントなどは取っておいてと言われていたので、どれもこれも「とりあえず」押し入れの奥へしまう。紙類の何もかも、「とりあえず」奥にしまって、見えないように違うもので隠していた。
 大量の「とりあえず」が隠されていく。
 ええ。面倒くさかったんですね。
 私にとって、紙類の面倒くささは最強。
 面倒くさいから隠して、そして、忘れる!
これもまた、無責任の極み! ズボラ! ガサツ!  
 でも、ズボラでガサツをやめる気はなく、だからこそ、片付けなくていい環境を作る。
 「どうせ私はズボラでガサツだから」
と、言い訳をして片付けなかったわけだから。
 別にいいじゃない、ズボラでガサツでも。
 そんな私を嫌っていたのは親。
 私はそんな自分も悪くないと思っている。ズボラでガサツな他人も笑って許せちゃうのはとっても楽。
 だって、やることはやれていれば、だいたい大丈夫だから。
 
 
さて。
 紙類を押入れや納戸、クローゼット等などにしまい込んだ私の自己否定的思考の詳細は以下の通りだ。

紙類、どれを取っておくべきか悩む

どうせ自分は駄目だから、どうせ大事なものを捨ててしまう

どうせ失敗する

どうせ怒られる

それなら何も考えない、行動しないでいいか。
めんどくさいし

全部取っておく

自分が片付けられない証拠品なので見たくない

押入れ、クローゼット、棚の引き出しなど、そこら中に隠し続ける

紙の山が見えないところで増えていく

 このまま紙類から逃げていたら山が増えていく一方だ。山を見るたび「どうせ私は片付けられない」という自己否定スイッチは自動で押されていた。「どうせ私なんて」から変われない。
 それはもうやめたので、覚悟を決めて紙類の処分を決行する。今必要と思われるとのだけ避けておいて、3年以上触っていない紙類をガンガン捨てる。
 開けてみればゴミしかない。
 それなのにずっと紙類の処分が怖かった。

 昔、大事な書類をなくしたことがある。でも、夫は怒らなかった。

「もう一度取り寄せるから、大丈夫」

と言ってくれた。私が片付けられなかったせいで申しわけなかった。
 その代わりに、

ーー何やってるのよ!

と、その場には関係ないはずの母の叫び声が頭に響いた。それから、頭の中の母はため息をついて、

ーーだから片付けなさいって言ったのに
ーーどうせこんなことになると思った

 私の顔から目を逸らして吐き捨てる。どうしてか、母の顔が嫌でも思い浮かぶ。だからお前のこと嫌いなんだよと、顔で語る母が。

 でも、今は一緒に住んでいない。

「うまくできなくてごめん」

と、夫に言ったら、

「うまくできる人がうまくやればいい」

と、返ってきた。泣けた。これには泣いた。そんなことを言ってくれる人がこの世にいるんだよ。
 だから、私は他の人にも言いたい。
 うまくできる人がうまくやればいい。
 できない時は自分を責めるんじゃなくて、違う方法を考える。自分を責めても片付けはできない。
 できない自分を責めるんじゃなくて認める。
 その上でできることを探そう。
 それで大丈夫。
 肩の力を抜いたほうが、もしかしたら、そのうちうまくできるようになっちゃうかもしれない。

 話を戻して、
 捨ててみてわかった私の行動。
 失敗したくないから、「とりあえず」隠して忘れてしまう。「とりあえず」今はしない。結局何もしない。つまり怠惰!
 今回、その積み重ねで出来た紙の山を捨てることができた。
 できた。のだが。しかし、だが、しかし。
 実は、すべてではない。あまりの量に結局「とりあえず」を作っている。 
 いや、待って。
 しかし。しかしです。
 全部はできなくても、かなり捨てた。前進した。よくやった!
 と、思う。
 大丈夫。一度に全部完璧にしなくても、私は片付けられる。
 そんなふうに前向きに終えることにした。

 日々の生活の中でも紙類は少しずつ確実に減っている。
 大量に減らしたことで、いらないものはゴミ箱へ、いるものは然るべき場所へと収められるようになった。
 学校から送られてきた取っておくべき手紙をファイルに入れるついでに、そのファイルの中で、もう不要になった書類を捨てる。
 不要なもの、用の済んだものは処分する、を覚えたから、新たな紙類を溜め込まなかなったようだ。減っている。大丈夫、減っている。まだ古い紙類はあるけれど……まだ不安が残る。

 もう一度、紙類を処分する日を作ろうと思う。
 「とりあえず」ではなく「必ず」実行する日を作ろう。

 紙類は私にとってのラスボスかもしれない。
 

 



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