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読書録:サイロ・エフェクト

DXとは単にデジタル技術を使うことではなく、デジタル技術を活用して業務プロセスや業務そのものを変革(Transformation:X)して、生産性や競争力を高める取り組み。

そのためには自分の仕事だけではなく、全体を見て変えるべきところを見つけないといけない。いわゆる「部分最適」ではなく「全体最適」というやつ。

言葉で聞くと「そりゃ、全体最適の方が良いでしょ」となるが、「じゃ、具体的にどこをどうするの?」と聞かれるとウッ、、となるのが正直なところ。

そんな折、とあるセミナーで京都大学の加納学先生が「サイロエフェクト」という本を紹介されていた。セミナー自体はデータ分析に関する話で、データが各部門に閉じて保管されている「サイロ化」について言及した際に紹介されており、サイロ化は「自分達はこれで良いから」というまさに「部分最適」。

ちなみに加納先生は講演がめちゃくちゃ上手で、話を聞いているだけで面白い。

前置きはさておき、このようなことが書いてあった。2000年代のソニーは部門毎のサイロ化が進み、開発状況などの情報共有がされていなかったため、似たような製品を独自に開発した挙げ句、それぞれに互換性が無いという無駄な開発をしてしまった。

また社内競争に明け暮れた結果、顧客思考が疎かになり、Appleの後塵を拝してしまう結果となった。

このように、自分達の組織が他の部署に先んじるために情報を囲い込もうとすることがサイロ化の要因の1つとなる。

企業としては顧客を中心に考えるべきなのに、自分達や企業内部が中心になってしまい競争力も失うという結果になる。

一方、アメリカのとある大病院では専科の異なる医者同士のサイロ化を防ぐために顧客である市民が医療を考える切り口である異常のある部位や癌などの病名で一括りにしたセンターを作り、専科の異なる医者同士が協力できる仕組みを作ることでサイロ化を防ぐことに成功している。

複雑化が進む世の中では分業は必要不可欠だが、サイロ化への対策も同時にしないといけない。アメリカの病院のように顧客視点で医療サービスを捉えるのは非常に良い取り組みで、製造業でも自社の製品軸ではなく、自動車や環境保護製品といった顧客が使用する最終製品を軸にすることで異なる製造部門の人々が共通の課題に取り組み、サイロ化を防ぐことができる。

また部門同士の縦構造の橋渡しになることができる人材を各部門に10%ほど作ることも有効。その人たちが全体最適に物事を捉え、各部門に展開することで結果的にサイロ化を防ぐことができる。

私が勤める会社の取り組んでいることや頭の中で実現したいと思っていることが概ね間違っていないことが分かったので、この考え方に共感してくれる人をどのように増やしていくか、会社の仕組みとして定着させていくかが今後の課題。

また、自分の中でもサイロを破壊することで、どのような"Transformation"を実現できるのかを説明できるようにする必要性を感じているが、そこができていない。

ちなみにアメリカのとある州の警察署では、各部門が持つデータを繋げて活用することで事件が起きる可能性の高いマップを作ることで未然に事件を防ぐことができるようになったが、勘と経験に頼った抵抗層は手強く、サイロを破壊するメリットが示されながらも、最終的にサイロを破壊できなかったことから、どうにもならない組織もある。

私の勤める会社がそうでないことを切に願う。

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