美栄靖奈

短い小説を書いてます!サークルで出した作品や発表しなかった作品、落選した作品を、せっか…

美栄靖奈

短い小説を書いてます!サークルで出した作品や発表しなかった作品、落選した作品を、せっかくなので置いていこうと思います。 https://novel.daysneo.com/sp/author/DOSUKOI_117/

最近の記事

金平糖 あとがき

『金平糖』は自分の中で一番良くできた作品です。 なぜかというと、大学の講義で様々な人に見ていただき、批評してもらった作品だからです。 自分が思っている以上に作品を読み込まれていて、こっ恥ずかしくなった思い出があります。 まるで私の頭の中を覗かれているような感想や私以上に登場人物に入り込んだ感想をもらい、ストリップをしているような気恥ずかしさがありました。 ただ、指摘をもらうことで、変えなければいけない点やこだわりたい点が明確になり、何が書きたかったのか具体化しました。 人に読

    • 金平糖

      「君と結婚するときはあの一番星をプレゼントするよ」  なんて言った男は星になった。変わった人だったけど、そのときは本当に彼なら星をくれると思ってた。彼の言う星が空に浮かぶ星じゃなくても何でも良かった。彼がくれるものは何でも嬉しかったから。  彼とは働いていた本屋で出会った。彼は絵本を読み漁っていた。いつもは子どもたちでにぎわう絵本コーナーは、絵本を立ち読みする彼を怖がって閑散としていた。絵本コーナーには似つかわしくない、難しい顔をしていたから本探しを手伝った。彼が絵本を探し

      • 業務連絡 あとがき

        これも「冷雨」と同じく、縛り小説のボツ案です。 死は救済というテーマにはあっているのですが、「虚構のマリア」の題材とタイトルがハマりまくっていたので、ボツにした作品です。 初めておばあさんを作中に出しました。登場人物にあった話し方を表現するのは難しいなと感じながら書いた覚えがあります。 雨のジメッとした肌に残る雰囲気と後味の悪さを上手くかけたと思うので上げました!

        • 業務連絡

           雨が降っている。  市営バス運転手の狩野清次郎は、いつもどおり、駅から営業所までの道を運転していた。  田舎の夜は街灯もなく、ただバスの光だけが道を照らしていた。  5つ目のバス停に人影が見えた。  乗ってきたのは老婆だった。  こんな夜遅くにバスを利用する人は珍しかった。ついつい老婆に声をかけた。 「おばあちゃん、どうしたのこんな夜中に、何か用事かい?」  最近は老人が徘徊して、家に帰れなくなってしまう事件もある。老婆がある程度の目的があるなら、きっと大丈夫だろうと狩野は

        金平糖 あとがき

          冷雨 あとがき

          この作品は文芸部にいたときに課せられた縛り小説のボツ案です。 死は救済がテーマで、雨が降っているから始まるという縛りでした。 そのときは「虚構のマリア」という作品を提出しました。 この作品をボツにした理由は、死が救済されてる感じがしなかったからです。 テーマからは外れてしまいましたが、個人的に好きな作品だったので、掲載してみました。

          冷雨 あとがき

          冷雨

           雨が降っている。  遠くへ行こうと思い立ち、深夜バスに揺られながら、街ゆく人の様子を眺める。色とりどりの傘が眩しく、カーテンを締めた。  パーキングエリアに着いて、皆ぞろぞろ降り始めた。正直このまま眠りこけてしまっても構わないのだが、走行中にもよおすのは嫌なので、トイレに行くことにした。  パーキングエリアに降りると、コンビニに行く人や、談笑している人など思いの外にぎやかだった。  トイレで用を足していると、隣から声をかけられた。 「あれ、坂本だよね?久しぶり」 「え、佐藤

          新月の君 あとがき

          「新月と君」は文芸部にいたとき、合同誌に上げた作品です。確か冊子になった作品で、こちらには上がってなかったので、載せてみました。 大学生になってから小説を書き始め、この作品は5作目くらいだったと思います。 ヒロインは猫をイメージして書きました。猫はこちらから近づくと離れていくのに、こちら側が興味を示さないとちょっかいかけてきますよね。あと、不意にいなくなることがあるので、猫の不思議なところや天邪鬼なところを込めてみたつもりです。 読んでいただきありがとうございました。

          新月の君 あとがき

          新月の君

           彼女は新月の夜に泊まりに来る。 「今日は遅かったじゃない」  アパートの階段を登ると、彼女は意地悪そうに笑った。  真っ黒なキャミソールワンピースを着た彼女は夜に溶け込んで、首と手足だけ浮いていた。 「今日は夜勤だから遅いよって言ったのに」  扉を開けると彼女は僕の後について来た。下げていたコンビニ袋を人差し指で引っ張った。 「今日のお夜食は何?」 「今日は唐揚げ弁当です」  彼女は不服そうに「私のアイスが入ってない」と呟いた。 「また買いに行こうよ」 「私はもう寝たいわ」

          祭囃子が聞こえる あとがき

          この作品は文芸部にいたとき、最後に出した作品です。 文化祭のオンライン部誌に載っていました。 何故か私だけ体裁が変えられていて、かぎかっこ外れてたり、字下げしたのに上げられちゃってたりしてて、残念な感じのまま発表されています。ちょっとだけ悔しかったので、こちらで上げてみました。 私には田舎らしい田舎がないので、幼い頃、友人が帰省した話をするのが羨ましかった思い出があります。 羨ましさを昇華させた結果、ファンタジーな感じになっていると思います。 人間関係に悩んでサークルは2年で

          祭囃子が聞こえる あとがき

          祭囃子が聞こえる

           兄から帰省するように言われた。  父に勘当されてから、十年近く帰っていなかったが、どうやら父の容体が芳しくないらしい。  鈍行の電車に揺られながら、父を想った。  一体、今更会って何を話すって言うのだ。  私は村の人々に嫌われている。帰りたくないというのが本音だった。  車窓に映る景色はどんどん低くなって黄緑や橙が一面に広がっていく。  天井にぶら下がった扇風機が首を振る音が、あの秋に意識を引き戻していく。  あの秋、私は祭囃子を聞いた。  私の暗くなっていく気持ちを冷やか

          祭囃子が聞こえる