ロイヤルホスト・戦後のごちそう

ロイヤルホストが好きである。肉料理からパフェから、全てがおいしい。あんなに質の高い料理が全国津々浦々のファミリーレストランで年がら年中食べられることを考えるたび、飲食業界のみならず、生産、物流、接客、その全てに携わっておられる方々に対して頭の下がる思いがする。

ロイヤルホストで特に素晴らしい料理をひとつ挙げろと言われたら、迷った挙げ句ギャザリングプラッターを選ぶだろう。
ギャザリングプラッター、これは横長のお皿に、たっぷりの肉と野菜が盛り付けられて供されるものだ。
「マッシュポテト、ケールサラダ、カポナータ(野菜のトマト煮込み)、スパイシーチキン、海老のグリル、アンガスサーロインステーキをワンプレートでお楽しみいただける」とロイヤルホスト公式は謳う。味も食感も違う料理を一皿で味わえる、幕の内弁当の洋食バージョンのようなメニューだ。ロイヤルホストで肉料理を頼む場合、私などは手癖でフライドポテトも追加注文しがちだが、ギャザリングプラッターにはマッシュポテトが含まれているため、追加注文の必要はない。
ここにオニオングラタンスープとライス、ドリンクバーのセットをつければ、たちまち豪勢なディナーが立ち現れる。更に言えば、かようにガッツリ食べたあとのデザートはやはりガッツリ甘いものが欲しくなるため、ホットファッジサンデーか、季節のパフェを頼みたくなる。特に秋のフェアメニューのパフェに載っている柿は、ほっぺたが落ちそうなほど甘い。

私にはロイヤルホストに行くと決めた前日、必ずネットでグランドメニューに目を通し、ある程度注文の目星をつける習慣がある。当日いきなりメニューを見ると、そのあまりに豊富な品数に目移りしてしまうからだ。
たいてい就寝する直前に、布団へ潜りながらスマホでメニューを開いてにらめっこをする。寝ぼけ眼を擦りながら豪華なメニューを品定めしていると、次第に視界がぼやけてくる。料理の写真がゆらゆら揺れ出す。その光景は、さながらマッチ売りの少女が、寒さに耐えかねて最後のマッチを擦った時に見るごちそうの幻覚のようである。

バターの載った厚切りのステーキ、果物とアイスがたっぷり詰め込まれた縦長のパフェ、グリルチキンサラダとホットケーキのブランチセット、海老フライにグラタン。そして、私の大好きなギャザリングプラッター。
私はロイヤルホストのメニューを、まるで戦後間もない時代の子どもが見る夢のようだと思ったことがある。

私はもう“戦争を知らない子供たち”の更に孫世代などにあたるのであって、そういう類のことを軽々しく口走ることは慎むべきなのだろう。それでも、あの豪華なメニューを見るにつけ、腹ペコの子どもたちがバラック小屋で布団に潜りながら、大きくなったらあれが食べたい、これも食べたいとごちそうを夢想している光景が浮かんでしまうのだ。参議院議長を務められている尾辻秀久先生の「私たちは、焼け野原の中、お腹を空かせて大きくなりました。『一度で良いから、お腹いっぱいご飯を食べたい』と思っていました」とのお言葉を思い出す。

バラック小屋の子どもたちは我々の祖父母であって、彼らはその後、豊かになった日本で子や孫を伴ってファミリーレストランで食事を楽しむようになった。その子らや孫らはそのうち、自らの友人を伴ってファミリーレストランを訪れるようになるだろう。そうしてギャザリングプラッターに出会うのである。

今日、特に郊外のロイヤルホストは建設当時の面影を残している店舗も多く、我々にどこか“レトロさ”を感じさせる。しかし、かつてロイヤルホストは時代の最先端であり、豊かさ、新しさの象徴としてその名が響いた時代もあったことと思う。そんなことを考えながら、ロイヤルブレンドコーヒーをおかわりしてツイッターを開いた。

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