ミステリー

「だから犯人は貴方です」先ほど旅館に着いたばかりの私に探偵姿の男が語る。
実際に私は嫌いなあいつを殺そうと準備していた。しかしそのトリックや動機も全て探偵が述べた通りに違わなかった。私が動揺しているのを察してか探偵はゆっくりと話始めた。
「世の中の探偵は人が死んでから鬼の首を掲げたいが為に推理をし、犯人を見つける。要はただの自己満足に他ならない。しかし私は殺される前にそれを止めた方が良いではないかと思っている」
探偵は少し寂しそうな顔をして続ける。「しかし、それによって犯人に激情され、危険な目に合うというのも否定できない。警察も起きていない事件を追えないし、貴方を捕まえることも無理だ。だから貴方の良心に訴えかけるしかない。お願いだから通報させないでくれ」探偵の顔は苦痛の表情に変わっていた。だから私は探偵を安心させるように柔らかな表情で返答した。「死人に口無しだ。黙ってろ」探偵の胸元は赤く滲んでいた。

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