毒吐く南瓜【#毎週ショートショート】

「うるせぇ!うるせぇ!」
畑から怒鳴り声が聞こえてくる。
農家が何事かと鍬持ってやってきた。
そこにあるのは1つの南瓜。
どこから声が出ているのか。南瓜の周りを見渡したけど穴らしき穴は見つからない。
なんて不思議な南瓜なのだろう。農家はカラス避けになると思い、この南瓜を保管することにした。
農家は納屋に南瓜を置いておくことにした。
「うるせぇ!うるせぇ!」
怒鳴り声一晩中外へ響いていた。
農家は納屋から十分離れた家でスヤスヤと眠っている。翌朝、農家は珍しい南瓜を自慢するため街へ出掛けた。
街の人々は皆農家から聞こえる怒鳴り声に何事かと目を向ける。怒鳴り声の正体が分かると、どうなっているのかと興味津々で農家の周りへ集まった。
「うるせぇ!うるせぇ!」
どんどん集まる人々に対して農家は得意気になって自慢話を始めた。
最初は興味を持っていたものの、街の人々はだんだん南瓜が気味悪いものであると感じ始めていた。やれ、雑に育てたからだとか、呪いを込めて作ったとか憶測で自分勝手に妄想した。
いつの間にか農家の周りから人はいなくなっていた。
農家は激情して南瓜を地面へ叩きつけた。南瓜は割れて砕けた。
すると、南瓜から怒鳴り声が聞こえることはなくなった。
「うるせぇ!うるせぇ!」
農家が怒鳴る。その怒鳴り声は南瓜から聞こえた声とそっくりであった。

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