帰ろう。
母さんのお腹が大きくなった。
僕は一人っ子だ。
4年生、兄妹を羨ましがったりはしなかった。
だってもう慣れてる、むしろ兄妹がいる方が不自然に思う。
学校に友達もいるし、家でゲームもできる。
母は働き詰めだけど、寂しいなんて感じることも、もうない。
2月はまだまだ寒い。
帰って早くゲームでもしよう。
僕は一人だ。
母さんが入院した。
ご飯はカレーだけ作れるようになった。
家に一人だけど祖父母が会いにきてくれる。
母さんのお見舞いも行ってる。
さみしくは、ない…。
もう暖かくなってきたそろそろポロシャツかな。
僕はもう5年生だ、終わりを告げるチャイムもなった。
帰ろう。
学校の外には祖父の車があった。
「産まれたっていいよったぞ、ほら会いに行こ。」
母さんの病室には、疲れきった母さんとしわくちゃな赤ちゃんがいた。
妹ができた。
「だっこしてみな。首元はちゃんと支えてあげてな。」
暖かい。
指で柔らかい手を突くと、握り返してくれた。
嬉しさと、緊張でなんだか口元があがった。
「来週には帰るからね。二人で。」
チャイムが鳴った、もう半袖でもへっちゃらだ。
体がふわふわする。
今日はみんなが帰ってくる、カレーでも作ろう。
よし、帰ろう。
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