最後の晩餐済ましたのに普通に生きてた

生存者「最後だと思ってめっちゃいい焼肉食ったのに」

生存者「外はわりかし荒れてるな。
無傷だったし、とりあえず他の生存者探してみるか」
ガチャ
隣人「あ、どうも」
生存者「隣の人も普通に生きてた」

隣人「私もせめて楽に死にたいと思って、お酒飲んで寝てしまってたんですけど、普通に起きましたね。
外はちゃんと異常ですけど……」
生存者「ちゃんと異常ってすごい言葉だ」
隣人「他の人はどうなんでしょうか。
携帯も繋がらないし……」
生存者「そりゃそうですよね……」
隣人「ほら見てください。
アンテナ一本しか経ってないんですよ」
生存者「普通に電波が機能している」

隣人「とりあえず思い当たるところに連絡しましたが、やはり返事はないですね……。
みんな、やっぱり……」
生存者「ま、まぁ、とりあえず状況を確認しましょう。
生き残っちゃったんで、とりあえず食料とも必要になりますし」
隣人「そう、ですね。
どうせ世界は滅びると思って、全部使い切っちゃいましたし」
生存者「みんな考えることは一緒なんだ」

生存者「近くのコンビニに着きましたね。
何か残ってるといいんですが……」
ウィーン
店員「いらっしゃいませー」
生存者「普通に店員がいた」

生存者「……なるほど。
貴方も滅びると思ってたら何か生きてたし、店も残ってたから、とりあえず他に生きてる人を探しがてら店番してた、と」
店員「そんな感じっす。
自分は滅亡の瞬間を見届けたかったんで起きてたんですけど、衝撃は凄かったのに何故か無傷でしたね」
生存者「あー、俺と同じ感じが」
ドサッ
隣人「とりあえずこれだけいただけますか」
店員「はい、1426円です」
生存者「支払い発生するんだ」
隣人「後25番2箱」
店員「お会計変わって2386円です」
生存者「この状況で煙草吸える度胸がすごい」

店員「そういえば働く必要もお金貰う必要もありませんでした」
生存者「早く気付いてもらえます?」
隣人「(スパー)まぁ、急にこんな状況になっても普通の生活から変えることは難しいですよね」
店員「そっすね。
来る途中誰も人見ませんでしたけど、ここ着いたら身体が普通にバイト体勢に入っちゃいました」
生存者「危機感感じてるの俺だけなんかな」

警察官「すいません、こちらで何してるんですか?
ちょっとお話聞いていいですか?」
生存者「もはや人を見かけても何も感じなくなった」
店員「なんすか?普通に外で飯食ってるだけっすけど」
警察官「店の外からたまたま見掛けたけど、ちゃんとお金は払ったのかな?」
隣人「え?払う必要あります」
警察官「そりゃお店の物だからね」
生存者「一番まともな事言ってる人が一番異常な状況ってあるんだ」
店員「なんすか、やるんすか」
警察官「そりゃ、私は公務を執行しているだけなんでね」
店員「ふざけんなよ」ドンッ
警察官「あー、手を出しちゃいましたか。
公務執行妨害の現行犯ね」
生存者「すげー、とち狂ってらぁ」
隣人「ちょっと、いい加減にしてください!」

警察官「冷静になりました」
生存者「一番頼りになりそうな人がそれでは困ります」
警察官「申し訳ない……」
店員「結局警官さんも俺と同じ思考だったんすね」
警察官「そうです。
気づいたら誰もいなくなってまして。
失意のまま彷徨い、ようやく人影を見つけたんですが、喜びのあまりつい本分が出てしまい……」
店員「まぁ、急に普通を辞める事は出来ないっすよね」
隣人「そうですね。私も寝ぼけてて、一回SNS見ましたから」
生存者「異常なのは俺なんかな」

生存者「話をまとめます」
隣人「はい」
生存者「昨日、隕石が落ちてきて世界は大混乱でしたね?」
店員「そうです」
生存者「で、みなさんも思い思いに最期を迎えました」
警察官「はい、家族と緩やかな最期を迎えた、つもりでした」
生存者「心中お察しします。
ですがまぁ、何か生き残っちゃいましたし、協力していきましょう」
隣人「そうですね、せっかく生きてますし」
警察官「ええ、家族の分まで生きますよ!」
店員「そういえば何か暑くないっすか?
店の中にカッチカチバーが溶けないまま残ってたんで、とりあえず皆で食べません?」
隣人「いいですね、頂きます」
警察官「食料は出来る限り節約すべきですが……まぁ、どうせ溶けますしね」
生存者「まぁ、世界は酷い有様ですが」
隣人「協力して、頑張りましょう」
店員「はい、乾杯。
いや、乾アイス?」
警察官「緊張感が無いな。
まぁ、これからの事はこれから考えましょう」
生存者「頂きます」シャクッ
隣人「美味しい。こんなにアイスを美味しいと思うなんて」
店員「暑いからじゃないっすか?」
警察官「まぁ、こんな状況だから特別に感じるのかもな」
生存者「……嘘でしょ」
隣人「どうしました……えっ?」
生存者「昨日よりもデカい……隕石だ」
店員「マジかよ……」
警察官「そうか、これで終わりか。
皆、すぐそっちに行くからな」
生存者「まさか本当の最後の晩餐は、アイスだったとは……」

生存者「……って、やっぱり生きてるんかい。
すごい光だったけど、大したことなかったみたいですね。
みんなは大丈夫でした?」

……
…………
………………

生存者「あー、なるほどなぁ……」

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