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85年ぶりの災厄

2023年7月8日記
大雨から1か月を過ぎましたが、まだ元の生活に戻れない取手市双葉地区ほか被害に遭われた地区の1日も早い復興を祈ります。

2023年6月2日から3日にかけて、牛久沼がある茨城県南部は記録的豪雨に見舞われた。
土浦市、つくば市、龍ケ崎市は観測史上最高雨量を記録した。

下表の平年値を見ればいかに異常な雨量かわかる
茨城県南部は東京より年間降水量が少ない
また一番雨量が多いのは10月である

茨城県には2015年に洪水を起こした鬼怒川や、過去たびたび氾濫した小貝川などがあるが、今回豪雨被害が一番大きかったのは牛久沼であった。

牛久沼の近くに住んで15年経つが、これまでは台風一過で牛久沼の畔に来ても水嵩が増してはいるが、田んぼが丸々水没したり道路が冠水したりなどの水の被害は見たことがなかった。
牛久沼は割と水害の少ない場所だと思っていたのだが…
6月3日午後、雨がやんだあとに牛久沼の畔に来た私は目を疑った。

国道6号から牛久沼に通じる道が通行止めになっていたため、牛久沼大橋に強制迂回させられたが、大渋滞の橋の上から見えたものは一面の水。

牛久沼大橋から見た牛久沼水辺公園
(6月3日13時59分)
公園の大半が水没し、後ろの住宅地にも浸水しているのがわかる。この住宅地が取手市双葉地区である
牛久沼大橋と牛久沼水辺公園の位置関係
この辺りは完全に水没、右隅の建物も床上浸水した。
普段の牛久沼水辺公園
上の写真で左下にみえる屋根が
この写真の右側にみえる休憩所の屋根である

公園に近づけないため、対岸にある牛久市のあやめ園に行くと、こちらも信じられないことになっていました。

完全に水没したあやめ園
三日月橋から
どこが川かわからないが、稲荷川は右側で左側は田んぼ
真ん中は農道である
水に浸かった田んぼに泳ぐコブハクチョウのつがい
(牛久市新地町)

牛久沼の越水は85年ぶりとのことで、周辺の人達からみればまさに想定外の水害である。
上の表のとおり、この地域は一番雨が多い月は10月と、秋の方が雨量が多い。
まだ梅雨入りしてない6月初めにこの雨は考えられない。
しかも、厄介なのはなかなか水が引かなかったことである。

6月9日の水辺公園
まだかなり水位が高い
6月9日15時30分
低いフェンスがようやく頭を出す
奥の高いフェンスも3日時点で半ば水没していた
6月11日(豪雨から8日後)
水位はほとんど変わらない。本来危険表示のあるフェンスは大半が見えている
7月2日撮影
長いあいだ水に浸かっていたフェンスの部位が
白く変色している
公園隣の田んぼ
水がなく干上がっている

牛久沼は江戸時代に干拓に失敗しているが、理由の一つが思うように水がはけなかったことである。
つまり一度水害になるとなかなか水がひかない。
また、牛久沼は小貝川からの逆流にも悩まされていた。牛久沼出口の水門は江戸時代にも存在していた。

牛久沼の南側にある八間堰(6月9日)
左側の水は新川地区の田んぼ等に冠水した水を排出していると思われる

この水害は周辺住宅地と農作物に甚大な被害を与えた。水辺公園隣の田んぼは耕作をやめてしまったが、汚水を被った稲は病気になりやすいという。

85年ぶりの災害は、普通なら考えられない梅雨入り前の時期に起きた。
気候変動もここまで来たのかと戦慄を覚える。

牛久沼は、通常雨が多くなる8月から水位が下がるが
農繁期である5、6月は逆に水位を高くする。
このことが水害をひどくしたというのは結果論で、普段のこの時期は水位を高くしないとならないくらい雨量が足りないことを示している。
だからこそ不意打ちと言ってもよい異常天候だったといえる。

2022年9月3日撮影
ハクチョウが立たないといけないくらい水位が下がっている
左側フェンスは農繁期(5~6月)に下一段あたりまで水位が上がるため白くなっている


2023年5月14日撮影
農繁期はこのあたりまで水位があがる

※7月9日追記
水辺公園の水位計は1mしか測れないようになっているが、これより水位が上がることは想定してなかったのだろう。

水辺公園の水位計
7月9日は40cmを指している

しかし6月3日の写真をみると、実際は水位計のはるか上まで水がきていることがわかる。この写真をもとに実際どこまで水が来たかを表すと下のようになる。

水位計の一番高いところよりさらに1m近く高い場所まで水が来たことになる。
水位計の一番上と同じ高さで色が変わっているが、水位がこのあたりでしばらく留まっていたことを表す。
いずれにしても、とんでもない増水が起こったことがわかる。

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