やさしいストーリー28
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
世の中の端っこで生きている老婆。
今日もトコトコと歩いています。
晴れている日には麦わら帽子を被り、
雨の日は花柄のお気に入りの傘の出番です。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
今日も、老婆はグングンと歩き続けます。
ある時、足元にふと命の気配を感じました。
「ココダヨ。ココダヨ。」
小さな声で
ふと、老婆は立ち止まり、足元を見ました。そこには小さな天道虫がこちらを見上げております。
おお、おお、そんなところにいると踏まれてしまうよ。
老婆は、よっこらしょとかがんで天道虫に手を差し伸べました。
‥‥
しばらく歩いていると、どこからかいい香りが漂ってきます。
「休憩いかが。」
右手を見るとそこにはミントの葉が生い茂っていました。
少しいただいておうちでミントティーでも頂こうかね。
老婆は少しだけ丁寧にちぎって手提げ袋に差しいれました。
老婆がゴミ置き場のそばを通りかかると、群がっていたカラス達が少しずつ姿を消します。すると、怖がって隠れていたヒヨドリ達の美しい鳴き声が上空に響きはじめました。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
老婆は今日も世の中の端っこで誰にも知られない人生を生きています。
老婆のことは、
誰も気にかけない。
誰も目を留めない。
だけど、何故か、老婆が歩いた後の道は不思議に美しくなっていきます。
そして、そこにはいくつもの花々が一斉に咲き誇るのです。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
それは、老婆の生き方そのもの
で、まるで何かに祝福されている様に見えました。
美しい人生‥とは
そんなものかもしれません。
photo by ruri thanks.
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