魔法の国ザンス

 ファンタジーでは、魔法の国ザンスシリーズが好きだ。

 しっかりと作り込まれた世界や、ユニークな魔法の数々。そして、人間やセントールといった親しみのある生き物だけでなく、例えばゾンビーや人食い鬼、幽霊にも、それぞれ社会があり人生(?)がある。作者の視点が優しいせいか、そのすべてが魅力的に描かれている。

 世界でいえば、生き物をツルで捕まえて食べてしまう触手木や、生き物が悪さをしないように心が穏やかになる魔法をかけてしまう森(心穏やかになった旅人は、そのまま死ぬまで眠り込んでしまう)という恐ろしげな魔法だけでなく、お腹が空いたらパンの木、寒い時には毛布の木やホットスープが入ったひょうたんを探すなど、役に立つ魔法が国中に溢れている。

 それから、”信じたとおりの現実になる力”という魔法の力を持つお姫様が、幼なじみの男の子を頼りになると思い込んだから、(本当はダメダメな)その男の子が大活躍するというのも、人間賛歌的でいい。

 ところが、残念なことに、このザンスシリーズは、21巻を最後に、もう10年以上も翻訳されていない。その間に、原作はもう40巻を超えている。

 そこで、第一巻から原書で読み直している。私の英語力は英検2級レベルなので、不十分ではあるが、翻訳書、辞書と照らし合わせながら、「ああ、ここは、こう訳しているのか」など、じっくりじっくり読んでいる。もしも元気なうちに、22巻まで読むことができれば、翻訳した原稿をハヤカワ書房に送って売り込んでみようかと思う。
 遠大ではあるが、ささやかな夢である。

 

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