見出し画像

"地上"の宇宙ビジネス : 宇宙産業の地上セグメントをみてみよう

この記事は…

◆筆者:宇宙輸送(ロケット)のスタートアップで働いている人
◆対象:宇宙ビジネスの「地上系」セグメントの状況をキャッチアップしたい方
◆内容:地上系の宇宙関連ビジネスの構成セグメントを整理しつつ、今後の展望について考える

※宇宙ビジネスに関するnote記事を毎月投稿する「#まいつき宇宙ビジネス」シリーズ:2024年4月分

はじめに

宇宙ビジネスと聞くと、やっぱり人工衛星やロケットといった「宇宙空間にいくもの」が想起されますよね。私もそうです。
でもそれらは全て「地上にあるもの」があって初めてミッションを達成できます。

今回の記事ではこの地上セグメントを整理してみたいと思います。
私自身もこの辺が頭の中でまとまってないので、どちらかというと自身の勉強用テーマになります。


地上セグメントとは

産業規模の統計から地上セグメントにはどんな要素で構成されているのかみてみましょう。
以下の円グラフは、頻繁に引用される BryceTech が集計した2022年の世界の宇宙産業市場規模とその内訳です。
下部の紫の部分に「Satellite Ground Equipment」と記載されていますが、ここが本記事で言う地上セグメントに相当します。

出典:BryceTech

この Satellite Ground Equipment の項目と市場規模額を書き起こすと以下のとおりです。

  • Satellite Ground Equipment : $ 145.0 B

    1. Network Equipment : $ 15.2 B

    2. Satellite TV, Radio, Broadband, and Mobile Equipment : $ 17.9 B

    3. GNSS Chipsets and Navigation Devices : $ 111.9 B

1. Network Equipment

ここには衛星やロケットと通信するための「地上局」が含まれると思われます。

地上局を自社で建設して衛星事業者にサービスを提供するビジネスが一番イメージでしやすいものです。また、最近では世界各国の地上局をシェアリングするプラットフォームも誕生しています。
データクラウド大手(Microsoft, Amazon, Google)も衛星データ向けのソリューションを提供していますが、自前で地上局をつくる会社も出てきており、今後ますます増加するとみられる宇宙-地上間のデータ通信に伴う需要を取りに行っています。

・例:地上局サービスで長い歴史を持つ KSAT社

・例:地上局のシェアリングサービスを手がける Infostellar社

・例:クラウドサービスAzureに自社の地上局も組み合わせたサービスを提供するMicrosoft社

2. Satellite TV, Radio, Broadband, and Mobile Equipment

ここは文字通りですが、衛星テレビ・ラジオ・通信に関連した機器を指しています。

1.Network Equipmentとの厳密な分類分けまではわかりませんでしたが、まずわかりやすいのが衛星テレビを受信するためのアンテナ。そして、最近急速に普及が進んでいる小型衛星のコンステレーションによる通信サービスの受信アンテナなんかも入ると思われます。

・例:低軌道通信衛星コンステレーションによる全地球インターネットを提供する Starlink

3. GNSS Chipsets and Navigation Devices

GNSSは衛星測位システムを指し、代表的なものがGPSです。
自分の位置情報を把握しナビゲーションするためのチップや機器を指した項目です。

この項目の市場規模の金額は $ 111.9 B と、めちゃめちゃ大きいです。なんと宇宙産業全体の3割近くを占めるほど。
個人的には最初驚きでしたが、考えてみると自動車のカーナビからスマートフォンやウェラブルデバイスまで身の回りのありとあらゆる製品にGNSSに位置情報機能が付いているのでその規模の大きさは納得のいくものですね。

・例:ランニングなどでペースや走行距離を測ってくれるスマートウォッチ

今後起きるであろう変化

最後に私がよく聞く業界トレンドから、地上セグメントに今後起きるであろう変化を書いておきます。

宇宙港の建設・計画立上げラッシュ

今「地上セグメント」と聞いてホットなトピックスは宇宙港(スペースポート)です。簡単に言うとロケットなど宇宙輸送系の発射場なんですが、日本国内でも北海道などで宇宙港整備が実際に進んでいます。また、海外でも、自国内にロケット会社がある国々(アメリカ・欧州)はもちろん、ロケットの技術を十分に持たない国々でも立地や政府施策を活かした海外ロケットの誘致を目指した宇宙港計画がぽこぽこと立ち上がっているようです。

今回紹介したのはBryceTechがまとめた古典的な分類によるものでしたが、近い将来、商業宇宙港でサービスを確立するところが出た際には項目が増えるかもしれませんね。

光通信の時代がやってくる?

現在、宇宙-地上間の通信は「電波(Radio Frequency)」で行われていますが、周波数枯渇問題などもあり最近では「光通信(Laser Communication)」が注目されています。光通信であればより多くのデータを高速にダウンリンクすることができるようになり、宇宙を使ったアプリケーションが”新しいステージ”に進むことが期待されています。
光通信は、既に衛星間の通信では実用段階になっていますが、宇宙-地上間はまだこれから。アメリカでも軍事も含めて非常に注目されている技術なので、実用化もそんなに先ではないと期待したいです。

まとめ

いかがでしたか、気になる項目はございましたか?
GPS受信機などGNSS関連のチップ・機器は何より身近な「宇宙領域のアプリケーション」なのかもしれませんね。
なお、私はロケット会社にいるので宇宙港の動向は非常に注目しています。ロケットの発射場だけではなく地域の交流や経済のハブになるポテンシャルがありますので。

自身の勉強用と言うこともあり、表層的な記事になってしまいました。。
地上セグメントに対する自分の理解の解像度の低さがお恥ずかしいのですが、それを再認識できただけで個人的には良しとしましょう。

ここまで読んでくださりありがとうございました。今月は以上!

Written by Genryo Kanno : https://genryo.space/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?