特別なスタジアム

僕は別にグランパスのファンでは無い。しかし、10年ほど前はきっとそうだった。

小学生の時にグランパスがJリーグで優勝した。あの瞬間はテレビにかじりついて見ていて、学校の友達とは毎日グランパスの話をしていた。生でプロのサッカーの試合を見たのもその年が初めてだったと思う。初めて見た芝生のピッチはテレビで見てるよりも狭く感じたが、サポーターの熱気は何千倍にも感じた。ホームのガンバ大阪戦。中村直志選手がロングシュートを決め、楢崎選手のスーパーセーブに会場は湧き上がった。当時の僕は会場の空気に興奮し、それは一生忘れられないものになった。
その会場こそが今週の試合を持って建て替えを行うパロマ瑞穂スタジアム(以下瑞穂)である。

その後も何度か瑞穂に足を運んだ。地下鉄で赤いユニフォームを着た人を見掛けると心が踊り、競技場に近づくにつれて聞こえるYO!YO!YOSUKEさんのハイテンションなアナウンスに全身が痺れた。
もちろん豊田スタジアムにも何度か足を運んだ。豊田スタジアムは傾斜が急すぎて怖いがスタジアムとしては別格だ。
しかし、僕にとっての特別は瑞穂だ。その理由はグランパスの他にもうひとつある。


それは、高校サッカーだ。

愛知県で高校サッカーを経験している人なら分かると思うが瑞穂は特別な場所だ。冬の選手権の県予選でベスト4に入れば瑞穂で試合できるからだ。
2年生の秋、準々決勝の5日前。「あと1勝で瑞穂」この状況に僕達はテンションがものすごく上がり、チーム全員で瑞穂を目指した。結果的に試合に敗れ、瑞穂には辿り着けなかった。それでも瑞穂を目指したあの時間は特別だった。

「瑞穂を目指した」と言えばもう1つ忘れられない事がある。

選手権予選が始まる1.2週間前。僕達の高校サッカー部には伝統的(?)な行事がある。それは、3年生の部員が高校から瑞穂陸上競技場を目指して走るというイベントだ。高校は名古屋市内では無い。距離にして45㌔程だ。これは本当にキツかった。

僕にとっての瑞穂はマラソンのゴール地点で、最高のスタジアムで、憧れの試合会場なのだ。

グランパスの試合をフルで見ることはかなり少なくなり、今は結果を追う程度になった。それでもきっと、瑞穂がリニューアルしたらチケットを取って、地下鉄に乗り、また足を運ぶだろう。

僕にとってパロマ瑞穂スタジアムは特別な場所なのだから。

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