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過去に膝を折った人が立ち上がるということ、フラワーデモ参加雑感

フラワーデモの目的は戒めではなく、変革と癒しと鼓舞だと行ってみて気づいた。

2019年11月11日、フラワーデモ東京へ初めて参加した。
行ってみて思ったのは、とても意義のある事だということ。そして認知の線を引き直すという革命的な要素があること。
そしてこれは斜陽国家にしてガラパゴス大国日本の中で、唯一と言って良い世界的な動きと連動しており、未来への可能性を感じる運動の一つである。
その感想を革命という点に焦点をおいて語る。

フラワーデモとは、#metoo の流れを受け2019年4月、4件の性犯罪事件が無罪として判決された事に対する抗議、および性犯罪撲滅を願って発足したデモ活動である。毎月11日をフラワーデモの日として、手に花を持って集まり、性被害者、性犯罪対策活動をしている人、思いを語りたい人など、様々な人がスピーカーとなり発言、講話を行う。デモというとプラカードを持って練り歩くイメージが強いが、同デモは、”集会”と呼ぶ方が分かりやすい。一箇所に集まり声をあげる形式だ。全国でその活動は広まっており東京では5回目を迎えていた。

当日、昼は雨がしとしとと降り、気温も13℃程度と昨今でも特に冷えた日だった。僕が会場である東京駅前の行幸通りに到着したのは19:30。集まっていたのは300人程だろうか、男はほとんどいないのだろうと思っていたが、思ったより多く驚いた。全体の3割程度は男性だった。運営にも聴衆にも、スピーカーとしても参加していたと思う。

僕が参加前に一番気になっていたのは、”一体どういった気持ちと雰囲気で5ヵ月も続けてきたのだろうか”という事だった。

実際に参加するまで、毎年8月や3月に流れる戦争や震災特番のように「過去の悲劇を忘れるな」「傷は簡単に癒えたりしない」「悲劇を繰り返すな」と声を張っているのだと思っていた。それは戒めの儀式だ。だがそれを、全国で毎月やるのはなぜだろうか。今までの他の事柄と同様、1年に1回特別な日にやるのとは何か違うのか。

実際に参加してみて、このフラワーデモの目的は戒めではなく、変革と癒しと鼓舞なのだと気づいた。

スピーカーの中にはとても悲痛な叫びもあった、悲劇的な事が日常となっていた女性もいた。少しづつ前に進んでいるとはいえ、現状はお世辞にも「良くなった」とは言えない。いずれの声も日本は、性犯罪に対して後進国だと思わせる内容だった。そしてこの後進国という枠の中には、人々の強固なバイアスがある。スピーカーの誰もが「バイアスを取り除き、異常と正常の認知の線を引き直そう」と声をあげていた。

異常と正常とはどんな事を言うのか。

・痴漢をされて不快に感じた人でも、当事者ではないと思っている。
→なぜなら痴漢には遭って当然だと思っているから。
・盗撮やのぞきには大した罪がないと思っている。
→なぜならこれらの被害者をメディアで見た事はほとんどなく、当然何が悪いのか分からないから。
・レイプとはセックスの一つのジャンルだと思っている。
→なぜなら多くのアダルトコンテンツで頻繁に出てくるものであり、これにも被害者の姿は映らないから。

これらはいずれもバイアスであり、実際は
・痴漢は犯罪で、人身事故と同じく撲滅すべきもの。
・盗撮やのぞきも犯罪で、被害者は財布や貴重品、下着などを盗まれたのと同様の被害を精神に被る。
・レイプはセックスの1ジャンルではなく、重犯罪である。

この現状(異常)と実際(正常)との線を引き直すためには、都度繰り返し正常な状態をほどき、そして固定し直すしかないのではないだろうか。

全国に波及し、継続的に行う意義はここにあるのだ。日本中で何度も繰り返し語ることで人のバイアスは解け、やっと変化していく。

第二次大戦の名将、山本五十六の名言にこんな言葉がある。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

ただ被害を訴えるだけでも、やめろと頭ごなしに言うだけでも、絶対しないと誓わせるだけでも、ダメなのだ。道は険しいがマナーは時代と共に変わっていっている。

もし、これらの性犯罪認知が正されたなら日本が世界中で最も女性にとって安全な国になれるかもしれない。役職や給金、国家議員数、それ以外の問題も山ほどあるが、世界で最も性犯罪が少ない国と言えるならば日本は大きな価値を手に入れる。それは世界中のどの国も未だ達する事のできないSFの世界のことなのだ。

それを実地でできる国。僕はここにとても未来を感じるのだ。そして、日本は認知の線を引き直すのは比較的得意ではないかと思っている。とても規範が好きな民族だからだ。刑務所をテーマにした映画でほのぼのコメディが代表作なのは日本くらいのものだろう。

僕らの性犯罪に対する規範は、フラワーデモの拡がりと共に今絶賛書き直されていっている。

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