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植物を育てる(1)by立花吉茂

 「世界の森林と日本の森林」は18回で一応終わりとさせていただき、今回から森林をつくるための「植物を育てる」を開始します。

多様性を尊重して種子をまく
 植物育成のスタートは苗木育成のために種子を蒔くか、挿し木をするか、接ぎ木の台木の種子をまくか、取り木が開始されるか、である。挿し木、接ぎ木、取り木はよくそろった苗を育てることができるが、これは全て同一遺伝子をもったクローン(栄養系)である。したがって自然を再生するようなREFORESTATION(復元造林)には適当ではない。観賞植物などなら話は別だが、自然は環境が変化するから、それに耐える遺伝子をもつ可能性のある個体が混ざっていなければならない。それには複数の親から取った種子をまくのが望ましい。種子は「減数分裂→受精→発芽」の段階で多様な遺伝子をもつことになっているから、挿し木などの栄養体とは異質である。多様性を尊重する意味からは同一種で、複数の産地の個体からとった複雑な種子が望ましい。

苗場育苗と鉢育苗
 造林用の苗は通常は苗場に短冊型の畦をつくって種子をまいて育てるのであるが、途中で移植して枝根を出させて、活着率の向上を計ったりする。移植を嫌う植物は鉢育苗を行う。また、補植と称して、枯れた株の跡に鉢苗を植えることもおこなわれる。
 鉢育苗は手数がかかるので大量におこなうことはあまりないが、ユーカリノキのような移植困難な種類では、いろいろな簡便な鉢が考えられている。ビニール鉢はかさが低くて便利で、何回も使用できるが、鉢の背丈を自由にできない欠点がある。移植困難な樹種は、枝根が出ずに直根が長くのびることが多いので、縦に長い鉢がほしいのである。そこで竹の筒を用いたりすることがある。
 種子をまくに当たっては、発芽の特徴をよく知っていなければならない。樹木の種子は発芽に長い期間を要するものが多く、事前に各種の処理を必要とするものが多い。種子の特徴については前月号に記したので、次号では具体的な発芽促進処理方法を述べよう。
(緑の地球67号 1999年5月掲載)

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