世界の森林と日本の森林(その18)by 立花吉茂
種子を蒔くには
森林の再生は苗を植えることから始まる。苗は種子を蒔くことから始まる。種子は熟した果実の収穫から始まる。いきなり3段論法になった。果実といえば、リンゴやナシを思い出すが、種子の形はいろい複雑である。作物を例にとれば、エンドウの種子は莢(サヤ)という果実の中に入っている豆である。トマトの種子は多汁な果実の中にあり、ホウレンソウの種子と呼んでいるのは実は果実である。
緑化につかう樹木類の種子も千差万別である。下図は多くの植物の果実を3大別したものである。なぜ、形にこだわるのか? それは、形によってその取り扱い方が変わるからである。蒔いたら必ず生えてほしい。扱い方を間違えると生えないからである。
〇殻斗類(どんぐり類)
スダジイ、コジイ、アラカシなどの常緑カシ類、コナラなどの落葉カシ類(ナラ)、マテバシイなどの殻斗(どんぐりのお皿)のある植物は、デンプン質の大きな種子なので、熟して落下してから、乾燥した場所にあると1カ月くらいで死んでしまう。だから、成熟期をよく調べて採取し、乾燥させないように貯蔵するか、取り播き(採取してすぐに蒔くこと)する必要
がある。
○乾果類
サヤの中に入っているもの、堅い皮で包まれているもの、羽のついたものなどで、カエデ、エンドウ、ナタネのようなタイプ、またフヨウ、ムクゲのような乾燥した果実の中に入っているもので、硬い種皮があって、吸水せず、何年も経ってから生えるものがある。熱湯処理で吸水する種類が多い。
○液果類
スイカ、リンゴ、モチノキ、バラのような多汁な果肉に包まれた種子で、果肉が乾燥と発芽を抑制している。果肉を除いて取り播きするか、湿らせて低温で貯蔵する必要がある。休眠している種子が多い。低温処理、ホルモン処理でよく発芽する。
(緑の地球66号 1999年3月掲載)