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植物を育てる(7)by立花吉茂

苗を育てる
 スギやヒノキのような造林樹種は苗を購入することもできるが、自然を復元させるための野生樹は種子集めから始めなければならない。それについては、前処理とともに前号に書いたのでここではふれない。苗の育成は鉢育苗と苗畑育苗とがある。また、最初鉢に蒔いて幼苗のときに苗畑に移植する方法もある。ユーカリやモクマオウのように最後まで鉢でないとだめな種類もある。このような種類の2~3年生のやや大きい苗を育てるのはなかなかやっかいで、縦に長い鉢が必要になる。ビニール製、パイプ、土管、竹筒などが使われる。
 
直蒔き法
 まず苗畑を選ぶ。排水の良い、軽い土壌が良い。必ずしも肥沃である必要はない。やや痩せた土の方が苗畑には向いている。
 畑を浅く耕し、1m幅前後の低い畝をたてて、縦4列に浅い溝をつけて1~2cm間隔くらいに種子を落とし、砂混じりの軽い土で浅く覆土する。覆土の厚さは種子の直径くらいで、深くても2倍くらいまでとする。覆土したら、敷き藁をおこなって、その上から灌水する。敷き藁が風で飛んでしまうのを防ぐために縄を張って押さえる。発芽しはじめたら、敷き藁を除く。その後、混み合った部分の間引きをおこない、翌年早春に床替えをおこなう。スコップなどで掘り返して苗を揃え、1m幅の畝に2列に30~40cm間隔で植える。灌水後マルチング(敷き藁)で雑草の発生を防ぐ。翌年定植用の苗ができあがるが、もう1年置く場合には、もし大きくなりすぎることが想定されたら、断根をおこなう。断根の目的は植え傷み防止と、大きくなりすぎて苗が細長くなったり、形が乱れたりするのを防ぐためである。唐鋤き鍬かスコップを斜めに苗の下へ押し込んで直根を切る。


 移植困難な樹種については、もちろん断根は危険であるから前もって植え傷みの程度を調べておくべきである。注意すべきことは、育苗期間は4年までであって、あまり長く苗畑に置くと、苗が大きくなりすぎて取り扱いに不便なだけでなく、活着率も悪くなり、良いことは少しもないから、4~5年も放置せねばならないときは手間はかかるがもう1度移植する必要がある。造園業者の植え溜めは、何度も移植したものなのである。
(緑の地球73号 2000年5月掲載)

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