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世界の森林と日本の森林(その11)by 立花吉茂

世界の森林と日本の森林
  人為的に砂漠化した地域先回には自然の砂漠地帯について考えてみた。今回は人為的にできた砂漠地帯、いわゆる砂漠化した地域について考えてみよう。これは、熱帯や温帯にもできるが、日本には起こらない現象である。日本では、いくら木を切り倒しても草が生え、先駆的樹木が生え、二次林となり、ちゃんと森林が復活してくれる。暖かさと湿り具合が一致するからである。暖かい地域では蒸発量が多いから、かなりたくさんの雨が降る必要がある。日本は夏場に雨が多いから砂漠化が起こらないのである。雨量が不足すると伐採後には土壌浸食が起こり砂漠化が始まる。また、寒さのために砂漠化が起こることもある。寒さのために草原しかできない地域と森林との境界付近では、いったん伐採されると森林は復元できず、砂漠化が進行する。われわれが緑化協力している中国山西省の黄土高原はこれである。
 
熱帯雨林の砂漠化
 東南アジアのタイ国には雨緑林が多い。日本の照葉樹林に似てもう少し樹高の高くなる森林で、熱帯雨林と見まがうような立派な森林もある。この森林が伐採されて「捨てられた土地」になった地域の緑化のお手伝いをしたことがある。伐採後、草が生えるのでそこに家畜が放される。家畜は樹木の芽生えもいっしょに食べてしまう。また、熱帯だから、土壌中の有機物の分解が早いので数年後には土壌中の栄養物が全部分解してしまい、草も生えなくなってしまう。乾季と雨季とが交替にやってくる地域だから、雨季の雨足は強い。草も生えていない土は雨に流され強烈な土壌浸食が始まる。こうして濁流が川に入り、砂漠化が進行する。強い雨が降る季節があるのに、砂漠化するのである。このような砂漠化地域が世界中に広がっているのである。
 自然の砂漠地帯の緑化を進めるよりも、いま地球に急がれるのは砂漠化した地域の緑化である。元森林地帯は植えてやれば復活が間違いなく成功する。われわれは自然に逆らうことをしてはいけない。われわれが自然を壊した場所をわれわれが元に戻すことが急務なのである。
(緑の地球57号(1997年9月)掲載)

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