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我が家のエネルギーとそのお財布事情 by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)

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電気自動車とソーラーパネル、蓄電池を組み合わせて生活をしている我が家の年間エネルギー自給率は95%で、年間約18万円の売電収入があり、電気自動車の電気代は月4,000円弱と、環境にやさしい生活を意識したらお財布にも優しい生活になりました。
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呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
今回は電気自動車とソーラーパネル、蓄電池を組み合わせて生活をしている我が家のエネルギーとそのお財布事情についてご紹介したいと思います。
 
菅元総理が2020年10月26日に所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と発表し、2021年1月18日には「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と第204回通常国会の政策方針演説で発表しました。その達成に向けて政府は再生可能エネルギー導入を最大限進めたり、建物の断熱化や省エネ設備の導入、蓄電池の設置、電気自動車等の導入、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立などに取り組む脱炭素先行地域を2030年までに全国で100ヵ所以上創出しようとしています(https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/)。
 
2017年に建てた私の自宅は、住宅の断熱性能などを大幅に向上させると共に省エネの設備を導入して消費エネルギーを減らしたうえで、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー消費量の収支をゼロとすること目指したZEH(ゼッチ)住宅で、2019年6月より毎日約70 kmの距離を電気自動車で通勤しており、まさに政府の目指す設備を利用して生活しています。太陽光パネル(京セラ,公称最大出力6.24 kW)と蓄電池(東芝,蓄電容量5.0 kWh)を設置したオール電化住宅(Panasonic製家庭用ヒートポンプ給湯器「エコキュート」設置)で、電気自動車(NISSAN LEAF e+,電池容量62 kWh,WLTCモード458km)を自宅と外の充電を組み合わせながら使用しています。2019年6月~2020年5月の1年間の我が家の電力のデータを解析してみました。この内容は、論文(https://doi.org/10.5793/kankyo.47.3_45)にまとめていて、YouTubeにも2022年3月12日に東広島市主催オンライン講演会で私が説明している動画(https://www.youtube.com/watch?v=36w0orKgw0g)がありますので、さらに詳しく知りたいという方はそちらをご覧ください。
 
その結果、我が家のソーラーパネルで発電した電力量は、11~3月(冬期)以外は電力消費量を上回っており、自宅で1年間使用した電力の95%をソーラーパネルの発電で賄っていました。もし、電気自動車への充電をしていなければ、118%賄えていました。この1年間の電気自動車の走行距離は、16,603kmで、これは自家用乗用車の年間平均走行距離(国土交通省)の約1.6倍でしたので、標準的な走行距離の家庭であれば、電気自動車の充電をしたとしても年間の電力消費量をソーラーパネルで発電した電力で賄うことが出来ると考えられます。
 
これに掛かった費用はソーラーパネルが223万円、蓄電池が109万円でした。しかし、設置にあたりZEH補助金93.4万円と東広島市スマートハウス化補助金17.5万円をもらうことができ、さらに「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により10年間は30 円/kWhで余剰電力を買い取ってもらえることになっており、2018年は18.5万円/年の収入がありました。これらの設置にかかった費用はFITによる10年間の売電収入と補助金で回収できることが分かります。
 
また、私が乗っている電気自動車の購入時の定価は約420万円でした。これにも、クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金最大85万円、エコカー減税13.4万円、自動車減税2.2万円、自動車税1‐2万円/年などの補助金と減税に加え、電気自動車の電気代が3,762円/月程度と安いため、通勤手当との差額が毎月1.5万円程度発生しており、ガソリン車に乗った場合と比べ維持費が5年で200万円程度安くなっています。つまり、ガソリン車を購入するときの車体代金との差額を5年くらいで回収できることが分かります。
 
温暖化対策を行うためには、お金が掛かったり我慢が必要だと感じている人も多いかもしれませんが、最新の技術により我慢せずに実はお金の負担もそんなになく対策を進められる社会の仕組みがだんだん出来上がってきています。そのおかげで、環境に優しい生活を意識した生活設計をしたつもりが、お財布にも優しい生活になりました。

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