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森と人とビジネスと(2):木材のカスケード利用 by 長坂健司(GEN事務局)

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GENの活動は、森と人と共にありました。近年ではSDGsの達成に向け、森に注目する企業が増えてきています。私の担当分では、森と人とビジネスの関係について考えてみます。
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 気候変動対策として、世界各地でエネルギー源の転換が行われています。例えば、発電用の燃料として一般的だった石炭、石油、天然ガス、原子力から、再生可能な風力、波力、地熱、太陽光、バイオマスに変えていこうとするものです。エネルギーの問題はかなり複雑で、送電網等の供給ネットワークの再編も課題ですが、その話はひとまず置いておきます。
 木質バイオマスエネルギーは、上述の通り、再生可能エネルギーの1つです。他のエネルギー源と比べた木材の特徴は、木材が他の用途にも使える点です。
 木材の様々な用途を把握するためのキーワードが「カスケード利用」です。カスケード(cascade:多段的)とは、元々、小さな滝の連続した様を指しますが、最近は、そこから派生して、資源の再利用の回数が増えるにつれ、その質が下がっていく様を指すことが多いです。カスケード利用をリサイクルの一種と捉える場合もありますが、その場合は「ダウングレードリサイクル」「ダウンサイクル」を意味します。資源の質が下がる、というのは少し分かりにくいかもしれません。例えば、上水道で使った水をトイレで中水として使い、下水場で適切に処理をして放流水として河川に流すまでの間に、水の利用の仕方が変化していく流れが挙げられます。
 木材のカスケード利用として一般的なのは、①建材に使う、②建築廃材をパーティクルボードと呼ばれる木質ボードに加工して使う、③燃やして熱や電気として使う、といった流れです。ただし、①の段階で、端材として切り落とされた木材を木質チップとして製紙原材料や燃料として使うこともよく行われます。木材のカスケード利用は、上流の小さな滝が下流にいくほど幾筋にも広がっていくイメージです。
 カスケード利用の各段階のうち、何らかの形を残して使う段階はマテリアルリサイクル、燃やして使う段階はサーマルリサイクルと呼ばれます。木材も他の資源と同様、できるだけマテリアルリサイクルが望ましいとされています。これは、質は下がるものの、資源として引き続き利用できることがその理由です。木質バイオマスの場合、木材として引き続き利用できるということは、地球温暖化につながる二酸化炭素を大気中に放出しないことを意味するので、気候変動対策としてとても重要です。一方、木材のサーマルリサイクルは、燃やしておしまいです。サーマル「リサイクル」と呼ぶのはおかしい、という意見もあります。
(続く)

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