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植物を育てる(10)by立花吉茂

里山と休耕田
農耕のはじまる以前の日本の自然
針葉樹林帯…北海道の東北部…エゾマツ・トドマツ・ハリモミ・ツガ・トウヒなど。
落葉樹林帯…北海道の西南部~東北地方~中部山岳地帯…ミズナラ・ブナ・ハリギリ・ケヤキ・ニレ。
照葉樹林帯…中部地方以南(西)…タブノキ・スダジイ・コジイ・アラガシ・イチイガシなど。
縄文・弥生→農耕がはじまる→海岸から河川の流域に農耕をはじめる。渡来人の増加、食糧の安定供給から人口増加→河川流域から周辺の平坦地の森林伐採、焼き畑、開墾、農地化(5000~8000年前)。
さらに人口増加→傾斜地の森林伐採、焼き畑、開墾、農地の拡大→水田耕作はじまる(1000~1500年前)。
新田の開発→棚田もできる→二次林の里山化。土地制度、世襲制など(江戸時代)
硫安の開発→多肥料化→反当収量の増加、里山全盛時代(明治、大正、昭和)。
化学肥料多用→燃料革命→農業の衰退→飽食時代→休耕田発生→里山放棄→現在。
 
現在の植生はどうなっているのか?
a)5%以下(原生林)…高い山の頂上付近、東北・北海道に残っているだけ。
b)40%はスギ、ヒノキの植林地……手入れされた植林地はきわめて少ない。
c)30%が二次林(かつての里山)……ごく一部が里山として使われている。
d)25%が各種保安林……準自然林、遷移のすすんだ二次林など。
現在どこも手入れがおこなわれず放置されている。このまま放置されると、a)はそのままで遷移し、b)は台風などにより崩壊し、水害などを引き起こすが、全滅後には遷移がはじまって50年くらいで二次林となる。c)はアカマツが減少してじょじょに原生林に遷移しはじめ、100年くらいで常緑樹が優勢な森林にもどるであろう。遷移が終わって照葉樹林や落葉樹林に戻るにはさらに200年を要する。d)は二次林よりやや早く原生林に戻るであろう。
 以上は人間がいっさい手を加えないとこのようになると予測される。
 
山間部の田畑はどうなる?
 いまの経済状態がつづくと仮定すれば、棚田や小さい水田や山の畑は放棄され、二次林に移行してゆくであろう。現在の小面積の田畑は、食糧輸入がつづくかぎり採算がとれず、老人たちが農耕不可能になれば、次世代に移ってから放棄されることになろう。大面積の農耕地はとりあえずはJA(農協)などが管理するであろうが、山里には大面積の大型農業機械のつかえる場所はほとんどないから放棄せざるを得なくなる。
 休耕田は管理にめんどうな場所や、小さい田、自宅から遠い田、水の引きがたい田などが当てられるから、放棄されるのはまずこのような田からである。
 
休耕田の活用方法
 休耕田は3年以上放置すると、宿根草が深く根を下ろし、水田に復活させるのに多くの手間が必要になる。さらに、5年以上も放置すると復活不可能になってしまう。これを防ぐのには、水田状態に水を張ってなにも植えないでおけばいつでも水田に復活することができる。水を張ると水田雑草が生えてくるがこれらは根が浅く、取り除くのが簡単である。また、化学肥料や除草剤などの農薬が散布されないから、自然が回復され、トンボや各種の昆虫、水生植物、水生生物、小鳥や水鳥などが復活し、ドイツでおこなわれているビオトープなどよりもはるかに豊かな日本的自然が復活できて一石二鳥である。そのうえ、干ばつの年にはこの水を利用することもできる。
(緑の地球78号 2001年3月掲載)

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