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植物についての雑エッセイ by 前中久行

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書き手:前中久行(GEN代表) 舞台は、中国黄土高原、日本列島の西半分。人里、農地、草地、庭、荒地など人間の影響下。脱線もします。
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記事一覧

黄土高原の「野草・雑草」料理 by 前中久行(GEN代表)

======================  現地の歴史や文化、食べ物に巡り会えるのもツアーの魅力です。蔚県の青空市場で、畑のいわゆる雑草が野菜として売られているのをみつけました。町中の食堂や宴会場でもその料理が出てきました。人間は身近な植物を食べてきた、その伝統が今も現存していることに個人的には大興奮しています。東アジアの共通文化として関心をもっています。 ======================  現地ツアーの時には町中での買い物の機会を設けています。とても楽しいと

苗定植時のペットボトル滴下灌水 滴下水量の測定と予測式 by 前中久行(GEN代表)

======================  中国現地で小穴をあけたペットボトルに水をいれて埋めるという灌水方法がおこなわれています。面白い発想で理にかなっているとも思えます。また水の量が足りるのか不安も残ります。活着率への効果の確認は中国国内の情報や現地での実施経過の蓄積を待たなければなりませんが、水の滴下量について測定して、予測式をつくりました。 ======================  今年の春の現地訪問時に、昨年の春に植樹現場で新しい灌水方法がおこなわれたこと

2024年春の気温と桜の開花日 by 前中久行(GEN代表)

======================  今年は桜の開花が大変早いという予想がもっぱらでした。しかし実際にはなかなか開花せず、在原業平の「世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし」の状況でした。気候と桜の開花については既に精緻な研究が行われていますが、私的な興味で大阪の気温と桜開花の関係データをさわってみました。 ======================  生物の季節的な現象を生物季節といいます。人間の生活、とくに農業と密接に関連します。桜の開花は日本

巨樹に親しむ 野間の大ケヤキ by 前中久行(GEN代表)

======================  どの地域であっても比較的身近に大きな樹木があります。大きな樹木をみると感動します。その大きさとともに経過した悠久の年月へ想いがいたるからでしょう。今回は大阪府にあるケヤキの巨樹を紹介します。寄生しているヤドリギもとりあげます。 ======================  2月と3月のGENなんでも勉強会では、ヨーロッパの巨樹や森林が取り上げられています。2月の勉強会では、ミュンヘン市内に点在する巨樹についてお話しいただきまし

冬の花 サザンカとツバキ~照葉樹天然林に野生サザンカの花を探す by 前中久行(GEN代表)

======================  サザンカの花の季節です。既に咲き出したツバキの品種もあります。サザンカとツバキは照葉樹林の樹木で、ツバキは青森以南に広範に、サザンカは日本列島西南部に自生しています。多くの園芸品種が選抜や改良されて、秋から春まで長期間にわたって咲き続けます。外国人旅行者は冬でも花が咲いていることに驚くそうです。いっぽう自生地の天然林内では上層を他の木に覆われ日照が少ないために成長や開花が難しい状態にあります。今回は野生のサザンカとツバキ・サザン

暑さ寒さも彼岸まで、ようやくヒガンバナの季節 ヒガンバナに対する認識の変化と受容 by 前中久行(GEN 代表)

 ======================  ヒガンバナは中国原産で、農耕とともに日本に伝来した植物といわれています。しかも三倍体で種ができないために株分かれや分球で日本列島に広がったのです。今では秋の風物詩として大きな関心を持たれていますが、かつては忌避された植物であることを知っている人は今ではすくないと思われます。海を渡り来たって拡散し、現時点のように広く人々に受け入れられるようになったヒガンバナの永い旅路を想うとロマンを感じます。  ================

庭でオニユリが咲きました ユリの思い出いろいろ by 前中久行(GEN代表)

====================== 私の記憶にある一番古い植物はオニユリです。花の記憶ではなく球根を掘り取ったことです。そんなこともあって拙宅の庭では、家人には花のブツブツが気持ち悪いとか花粉が服に着くとか不評をかいながらもオニユリが咲き乱れています。本当に乱れています。 ======================  先週まで自宅の庭でオニユリ(写真)が咲いていました。緑の地球ネットワーク副代表高見さんのお庭はボタンが満開になります。「立てばシャクヤク、座ればボタ

いわゆる雑草の花を楽しむ by 前中久行(GEN代表)

======================  ちょっとした土地があれば植物が勝手に生えてきます。いわゆる雑草ですが植物の生命力の強さに共感します。私の散歩道を彩る大切なアイテムです。雑草学では人間の目的を邪魔する植物が「雑草」です。雑草に何らかの価値を認めた途端に雑草は雑草でなくなるのです。今回のタイトルは論理的に破綻しているのです。 ======================  ここ2、3年は新型コロナウイルス感染症のため遠出を控えていました。自宅の近くを散歩する程度

木の若芽を食べるチャンチンとその関連樹木 by 前中久行(GEN代表)

====================== 春です。花より団子の季節です。中国や日本では木の若葉若芽を食べる食文化があります。木菜といいます。日本で代表的なものはサンショウです。中国での代表はチャンチンでしょう。黄土高原の人たちは厳しい冬が過ぎてチャンチンの芽が伸びるのを心待ちにしています。チャンチンとその料理およびチャンチンと様々な意味で関係する植物についてお話します。 ======================  厳しい冬が終わり木の芽がでるのを黄土高原地帯の人々は待

道路大渋滞!! どうする黄土高原の人々 by 前中久行(GEN代表)

======================  初期の現地ツアーはハプニングが頻発したようです。2010年以後になっても(ここ数年は現地へ行けていないのですが)、予期しないことがしばしば発生しました。交通渋滞や通行止めといった道路に関することが多いのですが、その時の現地の人々の対応はとても興味深いものです。 ======================  初期の現地緑化ツアーでは予期しないことが頻発したことが高見邦雄さんの黄土高原レポートに窺えます。https://blog.

黄土高原の作物と料理(2/2 ヒマワリ・マメ編) by 前中久行(GEN代表)

======================  黄土高原の作物とその料理について、今回はヒマワリと豆編です。ヒマワリは実は大切な作物なのです。伝統的日常料理の名称、形状、調理方法は多様です。しかし、素材をたどると多くは大豆とジャガイモに行き着きます。単純な材料から工夫して調理した料理を現地では「豆宴会」と表現して、その技と文化を誇っています。 ======================  黄土高原の夏の風景として目を引くのは、ヒマワリとジャガイモの花です。  近年、日本列島

黄土高原の作物と料理(1/2 イネ科作物編) by 前中久行(GEN代表)

============================== 黄土高原の景色は季節によって全く変わります。冬はまさに黄土色の世界ですが春以後は季節とともに変化して夏の農地はほぼ全面作物で緑に覆われます。栽培される作物とその食べ方および食味についての個人的感想です。二回に分けて、今回はイネ科の作物です。  =============================  山西省大同市や河北省蔚県の農業は春~秋の一毛作です。よく栽培されるのはトウモロコシ(玉米)、アワ(粟)、キビ(黍

1994年大同はじめての農村部 by 前中久行(GEN代表)

================= 前回の第006号に続いて初期の大同の印象です。高見邦雄さんから現地をみて緑化の技術的アドバイスが欲しいと依頼がありました。農村部をまわり実際に黄土と“対面”しました。水がなければ当然緑化はできませんが、黄土は水があればあったで別の問題がおきる難しい土だと実感しました。 =================  8月に、立花吉茂先生、遠田宏先生とともに大同を訪れました。  大同では作物は内蒙古とくらべるとよく生育していました。僅かながらも雨量が多

初めての大同1979その印象 私がGENの活動に参加する以前の状況 by 前中久行(GEN代表)

====================== 私がGENと関わるようになったのは1994年です。中国の乾燥地に興味をもったきっかけとちらっと通り過ぎた当時の内蒙古や大同の様子についてお話しします。 ======================  私が初めて大同へ行ったのは1979年、内蒙古自治区フフホトへの旅行のおまけとしての雲崗石窟でした。  内蒙古では、オルドスの砂地と大青山の草地にちょっと触れただけでしたが、乾燥地域の植物の印象は強烈でした。砂漠あるいは砂漠化した地域