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黄土高原史話 by 谷口義介

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書き手:谷口義介(GEN会員) 研究分野は東アジア古代史・日中比較文化。寄る年波、海外のフィールドはきつくなり、いまは滋賀の田舎町で里山保全の活動。会報に「史話」100回のあと、…
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2023年9月の記事一覧

黄土高原史話<23>こだわるわけではないけれど by 谷口義介

 いま、新しい苗圃の建設作業が最終段階。  大同市から北東へ10 キロほど行った地点に、7ha の土地を確保。「小老樹」を抜いて整地し、井戸を掘り、レンガで管理棟などを建て、そのまわりを塀で囲み……。今春スタートの予定で、ここでは針葉樹の育苗がメインになる由。  問題は、新しい苗圃の名前を何とするか。  正面に白登山が見えます。そこで高見GEN 事務局長から、「白登山苗圃」にしたら、という提案が。しかし、これには現地スタッフが気乗り薄。前回< 22 >で書いたように、漢の高祖

黄土高原史話<22>天下分け目の白登山 by 谷口義介

 去る9月5日、念願の白登山へ。西麓から仰ぐと高さ300mほどに見えますが、独立峰ではなく、東に連なる采涼山の支脈で、丘尾が小高くなった感じ(写真)。その地点に、1992年建立の石碑あり(写真)。前200年、漢の高祖劉邦が匈奴の冒頓単于(ぼくとつぜんう)に包囲され、7日目にしてようやく脱出しえたところです。  ことの発端は、韓王信の移封にあります。  信は妾腹ながら戦国・韓の襄王の孫に当たる名門の出で、身長2m近く、かの項羽をも凌ぐ偉丈夫です。前漢が成立して5年目の春、河南

黄土高原史話<21>東西ほぼ時を同じくして by 谷口義介

 アテネ・オリンピックでは、何といっても女子マラソン。マラトンの丘をスタートしてゴールのパナシナイコ競技場まで激しい起伏あり、特に25キロから32キロ地点にかけて標高差80 メートルの上り坂。スパートする野口みずき、歩道脇に坐りこみ手で顔をおおって泣くポーラ・ラドクリフ。  上空ヘリのカメラから見ると、コース周辺の丘陵には、造林したためか豊かな緑。ギリシアの風土については先入観があり、これは意外な発見でした。  「山々は土におおわれた小高い丘をなし、今日<石の荒野>と呼ばれて