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リレー小説に参加した話

数ヶ月前に、はじめてリレー小説なるものに参加した。

通常の小説は、一人の人間が最初から最後まで通して書くが、リレー小説は複数人が集まって、前の人が書いた内容に続けて次の人が書く、ということを繰り返して一つの小説を作り上げる。

今回は、7人の執筆者が集まった。自分は一番最後のパートを担当した。

一人分の執筆量はそれほど多くなかったが、自分は小説の執筆経験がほとんどなく、うんうん唸りながら小説を書いた。お世辞にも良い文章を書けたとは言い難い。

ただ、小説の執筆そのものはもちろん、リレー小説という特殊な創作体験が非常に新鮮で、全部ひっくるめて楽しかった。リレーをしながら、リレー小説について考えたことを書き残しておきたい。

リレー小説で起こったこと

・展開が読めない

小説家は、これから書くストーリー構成などを、プロットという形式でまとめると聞く。つまり、書く前に、小説の起承転結は大部分決まっている。枝葉の部分は途中で変わる可能性はあっても、幹になる部分は変わらない。

いっぽうで今回のリレー小説は、プロットを定めなかったため、ストーリーがどう転ぶか、誰にもわからなかった。一人目の方が冒頭部分を発表した段階で、その後の展開を正確に予想することは困難だっただろう。

もちろん、登場人物や舞台を見て、ある程度ストーリーを予想することはできる。これは、ふだん自分たちが小説を読むときに自然に行っていることだ。「このキャラクターはどう行動するんだろう?」「この後どうなるんだろう?」と考えること、これは小説を読む楽しさのひとつだ。

それと同時に、自分が執筆をする楽しさもある。登場人物を自分の手で動かしていく。ストーリーが破綻しない範疇で、自分の趣味嗜好を、作品に反映させることもできる。

そうしてみると、リレー小説は、「読む楽しさ」と「書く楽しさ」が両立する体験と言えそうだ。一粒で二度おいしい。

・文章の組み立て方や、文体に個性がにじみ出る

文章は、十人十色そのもので、人によって本当に違う。比喩を多く使う人、地の文で語る人、モノローグに力を入れる人、会話劇を繰り広げる人。

リレー小説だと、ひとつの小説のなかに複数の文体が混ざっているから、文体の違いを比較しやすい。

他の人と自分の文章を読み比べることで、自分の文章の癖が端的に読み取れる。

・キャラの人格がぶれる現象が起きる

登場人物の一人に、無邪気で純粋な人物がいた。

この人物が、自分がリレー小説を書いている途中で、どんどんうさんくさい人間に変貌していった。特に意図してそう書いたわけではなく、無意識のうちにそんな人間として表現されていた。読み返して「あれ、こんな人じゃなかったはず…」と、あわてて人格を軌道修正した。

この「登場人物が、自分の意図しない言動をしてしまう」体験は不思議だった。自分が意識の深い部分でその人物のことをうさんくさく感じていたか、自分が無邪気で純粋な人間を表現する語彙を持っていなかったかのどちらかが原因だと思う。

少なくとも、多重人格者をテーマにした小説でもない限り、登場人物の人格がころころ変わる小説は、読者を混乱させるだけだろうから、今回のリレー小説では、すでに表現されている人格に合わせることにした。

・作品について語りあえる人がいる

本を読み終えると、同じ本を読んだ人と、感想を共有して語りたいと感じることがある。同じ本を読んだ人と、感想を語り合うのは楽しい。読む人によって、まったく感想が異なることがあるのがおもしろい。マイナーな本だと、これがなかなかできないことも多い。

リレー小説を書き終えると、参加者は少なくとも全員、その小説を読んでいるから、自然と作品について語ることができる。

・バトンの渡し方に人柄が出る

今回のバトン小説に参加したメンバーは、皆さん優しい方で、バトンを受け取る人が書きやすい内容で文章をまとめて、バトンを渡していただいた。

それとは正反対のシチュエーションを目にしたことがある。昔、とある個人サイトの掲示板で、リレー小説が行われていた。自分はリレーには参加しておらず、見ているだけだった。

この時のリレー小説では、執筆者たちが悪ノリして、次の人が書きにくい内容にすることに全力を注いでいた。とは言ってもそこに悪意はなかった。皆仲の良い、執筆のベテランが集まっていたため、書きにくいバトンを受け取って、矛盾のないストーリーをひねり出すことを、むしろ楽しむような風潮があった。後日、その掲示板で「バトンに画鋲を貼り付ける」という迷言が生まれていたのが可笑しかった。

まとめ

かなり断片的な内容になってしまったけれど、リレー小説を書くなかで考えたことをまとめた。

これまでは、すでに出来上がった、プロによる作品を読むだけのことが多かった。これが書く側に回ってみると、たった一回リレー小説に参加しただけで、こんなに色々な発見があることに驚く。

文章を読むことと書くことの対比については、また別の記事で書いてみたい。

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