記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ハンジ・ゾエではなくアルミン・アルレルトが人類を救うのは何故か

※進撃の巨人最終話までのネタバレを含みます


進撃の巨人のキャラクター、ハンジ・ゾエ。


彼女(性別不明ですが女と仮定して話を進めます)は、132話『自由の翼』で飛行艇を出発させる時間稼ぎのために一人で地鳴らしに挑み、燃え尽きます。

最終話を迎え、巨人が消え去った世界が訪れた時、ハンジ好きの私が思ったのは「なんでこの場にハンジさんがいないんだ!」でした。

ハンジ・ゾエという人

ハンジ・ゾエは、巨人大好き調査兵団の変人分隊長として一般的に知られています。しかし、彼女の本質は精神潔癖で、公に身を捧げ、未知なるものへの探求心と好奇心、理解するのを諦めない精神を持つ、まるで聖母のような人です。あのエルヴィンですら子どもの頃の夢という動機が原動力だったのに、ハンジにはそういった私的な動機が一切ない。潔癖すぎて、かつての上官を追い詰めてしまうこともありました。
そんな彼女の心の美しさを作中で最も表しているセリフが、こちらです。
「虐殺はダメだ!!これを肯定する理由があってたまるか!!」(単行本32巻127話)
どんなに自分たちが追い詰められても、罪なき人を犠牲にして生き残ることなんて選べない。自分が良ければそれでいい、そんなこと受け入れられない。それがハンジなのです。
彼女の性格を知っているリヴァイは、弱気になるハンジに言います。
「蚊帳の外でお前が大人しくできる…ハズがねぇ…」
「あぁ…そうなんだよ、できない」(単行本31巻126話)
いっそ二人でここで暮らそうか。そう思ってしまうほど状況は悪化し、精神的にも肉体的にも限界だったハンジ。それでも自分だけ逃げるなんてできない。じっとなんてしてられない。それがハンジ・ゾエなのです。


誰よりも前を向いて進み続けたハンジ。しかし、巨人のいない世界にあと一歩届かず、その命を終えました。
何故でしょう。
何故って、そんなの諌山先生にしかわからないだろう、って話なんですが…。
ハンジではなく、アルミンが調査兵団団長に就任して人類を救うことになった理由。それは、ハンジがリーダーを務める世界は非現実的だから、じゃないでしょうか。

アルミン・アルレルトという人

アルミンは、ゲスミンと言われる程、実は冷酷な一面をもっています。アルミンはエルヴィンやピクシスらから、捨て身の理論を学んでいます。
「何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人は、きっと…大事なものを捨てることができる人だ」(単行本7巻27話)


エルヴィンは100人の仲間の命と壁の中の人類の命を天秤にかけ、後者を選びます。その姿を見たアルミンは、何かを変えるためになら人間性をも捨て去ることができなくてはならないと理解するのです。
しかしアルミンの基本姿勢は、話し合いと理解しあう精神です。海の向こうの人類との対立にも、対話での解決を訴え続けていました。ところが最終話。アルミンは親友との最後の会話で、こんなセリフを吐くのです。
「…エレン、ありがとう。僕たちのために…殺戮者になってくれて…」(最終話)
ハンジにはありえないセリフですね。ショッキングでさえあります。でも、アルミンが持つ捨て身の理論を考えると、納得のいく言葉ではないでしょうか。

現実

人類の8割を犠牲にして、2割の人類を救う。本当にそこまでする必要があったのか?エレンの過激さにアルミンも動揺しまくっていました。アルミンのエレンへの感謝の言葉は死にゆく親友への思いやりなのか、本心なのか、解釈が難しい所です。
しかし、どちらにせよ重要なのは、『進撃の巨人』において未来を創るのは虐殺を否定したハンジではなく、虐殺を利用したアルミンなのです。
これが現実です。
現実世界でも、成功して未来を変えていく人は、大事なものを捨てることのできる人です。それは自分を犠牲にするだけではなく、人間性をも捨て去ることが出来る人なのです。
心優しい人が政治家に向かないのと同じ。非常な決断ができる、絶対的なリーダー。それが今の世界の掟ではないでしょうか。
理想を追い求めたハンジが生き残れず犠牲になり、8割の犠牲を受け入れたアルミンが未来を背負う人物になる。これが現状、リアルなのです。

ハンジ好きな私としては不満だし、「なんで」と言いたくてたまりません。でもハンジを生かさなかったことが、諌山先生らしいグロテスクな描写だったと言えます。

こんな世界嫌だ!もううんざりだ!と思ってしまいますよね。でも、この現実は今の現実です。少しずつ世の中の価値観は変わっています。ハンジが生き残れない世界にうんざりする人が沢山いるということは、いいことなのです。アルミンが未来を背負う立場である方がファンタジーな世界へと、変えていくことは出来るはずなのです。

「でも…あきらめきれないんだ。今日はダメでも…いつの日か…って」(単行本33巻132話)


いつかハンジさんが生き残る世界こそがリアルになることを祈って。


――――――――――――――――――――――――――――――

〇ちなみに

進撃の巨人最終話を読むために別冊少年マガジンを買った皆さん。
なんと、進撃の巨人人気キャラクター投票の応募用紙が付いてます!!
ぜひハンジさんに清き一票を。ハンジさんの人気が高まれば高まるほど、この世界はきっと優しくなっているでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?