『電気は貯められる時代へ』

 小田玄紀です

 本日、リミックスポイントにて上海電気集団グループとの家庭用蓄電池に関する独占販売契約を含む提携について発表を致しました。

 上海電気は中国国営企業であり、グループ年商1.9兆円という巨大企業になります。

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 主には産業用蓄電池や大型洋上風力発電所の開発などを手掛けており、一般にはあまり知られていないですが、エネルギー業界では世界的にも極めて大きな会社の1つです。

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 世界各地で108GWの発電設備を持っていたり、環境保護活動も積極的に行っていることで知られています。

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 大規模発電案件については一定の資本力が求められますが、世界各国で大規模な発電事業を展開しています。

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 蓄電池についてはこれまでは産業用蓄電池を中心に事業展開してきました。既に日本でもいくつか産業用蓄電池については納入実績がありますが、今回は家庭用蓄電池において提携をすることになりました。

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 蓄電池の市場はまだそこまで大きくなく、現状では1000億円強という市場規模なのですが、実は電力事業を展開していくにあたり蓄電池が果たす役割はこれから益々大きくなってきます。

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 2017年で年間49000台程度の販売量でしたが、2018年には73000台になり、これが2020年には10万台を超える可能性があるとされています。実は現状の蓄電池は採算性という観点からよりも防災など非常用時を目的として購入されるケースが大半です。

 昨年も今年も大きな台風が日本列島を襲いました。台風の影響でしばらくの間、停電が続く地域が多発しましたが、こうした教訓から災害時にも電気は確保したいという需要から家庭用蓄電池が注目されてきました。

 これはこれで極めて大きな意味があると思いますが、本来蓄電池に求められる役割は災害時のみではなく平時から使えるものになるべきです。

 しかし、これまで多くの蓄電池はコストが高く、なかなか平時には使ってもコストが合わないとされてきました。そのため、『電気は貯めることが出来ない』というのが世間一般の常識としてまかり通ってきました。

 ただ、本来『蓄電』というのはまさに『電気を蓄える』ものであり、物理的には電気は貯めることが出来ます。これがコスト面において実現できないために『電気は貯められない』とされてきました。

 うちも電力事業を展開しており、自社で電力需給管理をしているのですが、電気というのは30分単位で同時同量の原則というものがあり、需要量と供給量を地域単位で調整する必要があります。つまり、需要が高くなる時には多く供給する必要があり、逆に需要よりも供給量を多くしてしまった場合は電気を捨てる必要があります。

 こうした電力需給管理を日々している身としては、電気には多くの無駄が生じていることを強く感じます。

 たとえば、太陽光発電においても最近では太陽光発電所が増加したこともあり、地域によっては出力抑制といって本来発電できる電力供給を抑制し、発電しても捨てる必要が出ています。

 また、電気は時間・地域によって大きく価格が異なります。これはビットコインと同じように電気は需給によって価格形成がされるからなのですが、電気は供給に対して需要が上がった場合は急騰することがあります。

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 これは一例ですが、今年9月3日のJEPX(日本卸電力取引所)の取引価格です。0時~8時頃までは6~7円/kWhなのですが16時頃は40円/kWhを超えています。例年、8月中旬~9月上旬まではこうした価格をつけてしまうこともままあるので、常にこれだけの価格差がある訳ではないのですが、この一例からみても分かる通り、電力価格は大きなボラタリティがあります。電力事業をしているとビットコインのボラタリティが可愛く見えてくるレベルです(笑)。

 こうした電力需給を調整するために、これまでも様々な取組が講じられてきました。たとえば、その一例がVPP(Virtual Power Plant)構想です。

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 出力抑制と需要調整を行い、電気が余っているところから足りないところに供給をするという仕組みなのですが、日本の地理的特性からも需要と供給の時間帯は全国的にほぼ同じ傾向にあります。たまに西日本で雨、東日本は晴れのような時に供給量に差異が出ることもありますが、日本の場合は東日本と西日本で電圧が異なるため、簡単に地域を跨いでの供給が出来るという訳ではありません。

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理想論として需要と供給のバランスをとろうということが言われますが、これにはどうしても蓄電池の存在が大きな役割を果たすようになってきます。

以前から『電気は貯められない』と言われてきましたが、実際に蓄電池が発明されたことがあり、『電気は貯められる』ということを多くのエネルギー関係者は知っていました。ただ、コストの面で『電気は貯められない』という結論に至ってしまっていました。

 今回、上海電気より供給を受ける家庭用蓄電池は従来販売されていた製品に比べて圧倒的な投資対効果を持っています。

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 蓄電池の容量によって価格も異なることから、単純な価格比較だけでなく容量・価格・保証年度など総合的な評価をするのが『生涯使用容量の保証値』という概念があるのですが、こちらで比較をした場合に現在日本で最も売れている製品の3~4倍、海外人気企業で今回国内進出で話題になった製品に比べて1.3倍程度の性能評価があることになります。

 ただ、残念ながらこの水準をもってしてもまだ『電気が貯められる』という水準にまでは達しません。これは、もう少し我々も蓄電池を普及させ、現在の市場規模を大きくさせていくことで、生産過程の改善を行い実現させていく必要があります。

 また、もちろんただ蓄電池だけを売るビジネスに終始するつもりもありません。家庭用太陽光のFIT価格終了となる世帯が昨年10月から出てきましたが、今後2023年までにこの市場だけで670万kWの規模になります。

 気づいていない内に一般家庭が組み合わせれば大規模発電設備を持つ時代になっています。これらについてもリーズナブルな蓄電池があることで、家庭にとっても価値が提供でき、また、日本全体にとってもエネルギーの最適化が実現できるような社会を創っていけるのではないかと考えています。

 そのための第一歩が本日の上海電気集団グループとの提携だとお考えいただければ幸いです。

2020年9月29日 小田玄紀

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