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経営に活かしたい先人の思想…その3


天下を長く維持する秘訣◆

 起業と、成功した会社を維持発展させることの、どちらが難しいのか?

 アケメネス朝ペルシアを建国したキュロス(紀元前600年頃~530年)は、「支配権の獲得(起業)は大胆さを示すだけのものによって達成されるのはよくあるが、獲得したものを維持し続けるのは、もはや節度と自制と十分な配慮なしには不可能なのだ」と言っている。

 また、明君として名を残す中国・唐の二代目皇帝・太宗の「創業と守成、いずれが難しいのか?」との問いに、側近の魏徴は、「帝王の地位を得た後は、気持ちが驕り高ぶってしまい、勝手気ままに振る舞うようになります。そだけに、守成のほうが困難であります」と答えている。

 ふたりに共通するのは、獲得したものを維持することの難しさだが、だからといって創業が容易いわけではない。魏徴は、「守ることは易(やす)く、取ることは実に困難であります」とも発言している。その上で、なぜ守成が困難なのかを、それに続く言葉で分かりやすく説明している。

「困難なものを獲得できたのなら、守ることはやさしいはずです。しかし、守ることが困難なのは、驕り高ぶり、贅沢をするようになるからです」

 魏徴も言うように、創業は実に困難だといえる。それだけに、創業の困難さを克服できたのなら、守成は簡単なように思えるが、現実にはできないケースの方が多い。なぜなら、創業を成し遂げた後、トップが知らず知らずのうちに、傲慢になり、贅を尽くすようになるからだと、魏徴は指摘しているのだ。

 では、どうすれば守成の困難さを克服できるのか。

 その答えとして紹介したいのが、漢(紀元前202年~)の建国者、劉邦に仕えた陸賈の言葉だ。

「馬上で天下は取れても、馬上で天下は治められません。周の湯王や武王は、武力によって天下を取ったものの、その後は、徳による統治をはかったので、その天下を長く維持できたのです。武(攻め)と文(守り)を併用するのが、天下を長く保つ秘訣です」

 同じ主旨の考えをルネッサンス期イタリア・フィレンツエの官僚だったマキャベリが『政略論』に書き残している。

「創業はひとりで断行すべきもので、衆議によれば仕事を混乱させるばかりで、効果が上がらない。しかし、創業後、これを維持発展させることまで一人で負担することは無理で、この段階では多数の者を協力させることを考えねばならない」

 これは企業経営でも同じだ。創業者には「馬上で天下を取る」タイプが多いし、側近には「武勇」に長けたタイプが多いが、この組み合わせで成功を手にした後が問題になる。自分の成功体験に酔いしれて、いつまでも馬上にいたのでは、その天下を維持することはできないと理解したい。

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