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「花束みたい」でも付き合えない

これは数年前の秋の出来事です。
当時、気になる子がいました。その子とご飯に行くことになりました。
場所は下北沢。東口の小田急改札前で待ち合わせをし、お店へ向かいました。たしかその日は小雨だった気がします。

僕は、魚がおいしい駅近くの居酒屋に行こうと考えていました。
一度も行った事はなかったのですが、ネットのレビューが高かったので即決し、予約はせずに、道順の下調べもせずに向かいました。
Googleマップを露骨に見ながら彼女と向かうと、その日お店は休みでした。
そのお店以外、当ても調べてもいなかったので、歩きながらすぐ入れそうなお店を急いで探しました。20分ほど歩いてようやく居酒屋に入れました。たしかその日は小雨だった気がします。

初動はよくなかったかもしれないですが、乾杯をし始めると話は盛り上がりました。
元々好きな映画やTV番組が同じ事もあって、エンタメ話で盛り上がりました。その中で好きな本の話になり、彼女が最も好きな本はある芸人さんのエッセイ本でした。

「えっぇええ!?」

思わず大きな声が出ました。
その本は僕が今オンタイムで読んでる且つ、この日のバックの中に入ってるエッセイ本でした。

「うそっ!?」

彼女も思わずな声を出しました。
その後、会話はさらに盛り上がり、お互いが電車から降りた時いくらエスカレーターや階段に近い所で降りたとしても、列の最後尾まで回るという共通点も出ました。

この瞬間、僕は心の中で思いました。
「花束みたいな恋をしたじゃん。いや、花束みたいな恋をしただよ」

『花束みたいな恋をした』は21年に公開された菅田将暉さん×有村架純さん主演の恋愛映画です。ある日の明大前駅で、たまたま終電を逃した麦(菅田将暉さん)と絹(有村架純さん)が、偶然出会い、ある出来事から始発までの時間を2人で居酒屋で過ごし、話していくうちに好きなものがことごとく同じことが分かっていきます。また映画の半券を本のしおりにする事や、お笑い芸人・天竺鼠の同じ日のライブにお互い行く予定だったが行きそびれたことなど、驚くべきほどの共通点もある事から、一気に仲良くなり、付き合う事になって…というストーリーです。

劇中の2人が出会った場所は明大前。僕らはそこから数駅ほどの下北沢。
改めて当てはめていきましょう。
明大前が下北沢。天竺鼠のライブがエッセイ本。映画の半券を本のしおりにするクセが、どんなに近くで降りたとしても電車の階段とエスカレーターは必ず列の最後尾に回る。
また映画のインスパイヤソングはAwesome City Clubの『勿忘』という曲なのですが、当時僕がよく聴いてた曲は玉置浩二の『田園』。

まさか、現実に『花束みたいな恋をした』のような出来事があるとは思いませんでした。しかもそれが僕に舞い降りるとは。
この日僕は、彼女を気になっている人から、彼女を好きな人に変わりました。
そしてこれらの共通点から、確実に付き合えると思いました。

その後、何度か会い、告白をしました。
フラれました。「顔がタイプじゃない」、「一緒にいる時うるさい」という理由でした。劇中の有村架純さんはこんな事一切言いません。劇中の菅田将暉さんは一切こんなフラれ方しません。
そう言われたのに、僕は数週間後、またごはんに誘いました。
彼女は「また会ったとして、あなたにこれ以上の期待をさせたくないから」、「もう会わない」、「連絡もしないで」と言いました。いや、わざわざ言ってくれました。彼女自身の為は勿論ですが、僕の為にもはっきり言ってくれました。
よくわかりませんが、彼女は有村架純さんであった気がします。そして僕が菅田将暉さんでなかったのは確かです。

『花束みたいな恋をした』大好きな作品です。
そして来年には、再び監督・土井裕泰さん×脚本・坂元裕二さんという‘花束タッグ‘で『片思い世界』という作品が公開されます。
主演は広瀬すずさん×杉咲花さん×清原果耶さんです。
また劇中のような出来事が訪れるかもしれません。今度は僕が清原果耶さん側かもしれません。
『花束みたいな恋をした』を映画館で観たからこそ、生まれた感情が沢山ありました。
だから『片思い世界』も絶対に映画館で観たいと思います。

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