ウイスキーブレンダーの仕事に学ぶ「訂正する力」
この動画を見た。面白く、刺激があり、味わい深くもある内容だった。ぜひ見てみてほしい。
出演されていたのはこの方。輿石さんという、サントリーの山崎蒸溜所でブレンダーをされている方だ。
https://www.suntory.co.jp/factory/blog-d/000178.html
凄まじい種類の原酒を緻密に組み合わせ、ウイスキーの味を完成させていく。日々の1つ1つの積み重ねが、サントリーのウイスキーの評価を守っているのである。
「変わらない美味しさ」という表現がある。山崎を好きな人は、飲んだ時に「やっぱり山崎は美味しいな」と思うだろう。ずっと変わらぬ味を守っていると感じる。
しかし、「美味しい」という感覚を飲んだ人に変わらずに与え続けるためには、実は改善が必要なのだ。全く同じ味では、1回目に飲んだ時の感動を2回目に与えることはできない。1回目に飲んだ時の方が美味しかったな、味が落ちたのかなと感じてしまう。「味を変える」ことで、「同じ美味しさ」を提供しているのである。
以前紹介した、東浩紀氏の「訂正する力」という本では、物事の本質を維持し、同一性を担保するためには、一見すると全く逆ベクトルを指しているように見える「訂正する力」が実は求められるという点を指摘している。ウイスキーのように世界で高品質な製品が鎬を削っている領域では、味を「訂正」し続けることで「美味しさ」を維持する、という構造にある。