最近の記事

「なぜ日本でカウンセリングが流行らないのか」に対する逆張り

「なぜ日本でカウンセリングが流行らないのか」「もっと日本でカウンセリングを身近なものにしたい」といった問題提起がよく行われる。 比較して取り上げられるのは,アメリカやイギリスである。「精神疾患を治すためだけでなく,心の調子を整えるために受ける」「日常生活における相談相手としてプロのカウンセラーを利用する」などの説明で,日本とのカウンセリング文化の成熟度の差が語られる。疑問に感じるのは,日本は遅れていて英米が進んでいるという言説である。 「悩みを相談する」という行為は,人間

    • 占いの楽しみ方

      大学と大学院で科学としての心理学を学んできたこともあり,自分は占いなどのスピリチュアルなものを信じていない。授業で習った通り,占いの根拠はバーナム効果・予言の自己成就・確証バイアスで説明しきれると思う。 一方で「臨床心理士なら占いなんて信じてないんでしょ」と言われるのもあまり嬉しくない。科学的根拠のあるものしか信じられないためにスピリチュアルな精神世界を楽しめない人,と言われているような気がしてくる。正直その通りであるから悲しかった。 体験もしないで批判ばかりすることはあ

      • HSPが示す時代の変化

        HSPという言葉を聞いたことはありますか。ハイリー・センシティブ・パーソンの略で「とても繊細な人」と訳されることも多いようです。1998年に生まれたこの概念は、近年本が出版されて認知されるようになり、さらにバラエティ番組でも紹介されたことで広く注目されるようになりました。 HSPとはHSPは以下のような特徴がある人のことを指します。 人といると疲れる 他人の雑さが気になる 機嫌が悪い人がいると苦しい さらにHSPに画期的なのは、こうした特徴は性格ではなく、脳の構造の問題

        • (3)具体的にどのような支援か

          今の自分にできること自分は大学院を修了したとはいえ,まだ資格を持っていません。なので公認心理師・臨床心理士として活動することはできず,うつ病や不安を治療するといった行為には責任は持てません。名称独占資格なので行為をすること自体は問題はないのでしょうけど,職業倫理に反しているとは思います。なのでこの支援は,治療行為ではなく,人生の物語の編集や共同執筆と言えるようなものなのかもしれません。 (1)それまでのストーリーを聴くまずはその人のそれまでのストーリーをそのまま理解します。

        「なぜ日本でカウンセリングが流行らないのか」に対する逆張り

          (2)なぜ個人の人生の物語が重要なのか。

          心の救済を担ってきたもの臨床心理学は,科学的手法を用いて心理的問題を抱える人を支援する学問です。臨床心理学は新しい学問ですが,心理的問題を抱える人を支援する行為自体は臨床心理学に特有のものではありません。同じ学問の世界でもニーチェやキルケゴールの実存主義哲学はまさに生きる意味について思索を重ね,悩める人々の背中を押してきました。 その中でも古くからの一番の担い手は宗教であったのだろうと思います。「なぜ生まれてきたのか」「なんのために生きているのか」などの根源的で答えの出ない

          (2)なぜ個人の人生の物語が重要なのか。

          (1)人生の物語を作り直す支援

          どんな物語を生きているかカウンセリングを自分なりに噛み砕くと,「今までクライエントが背負わされてきた辛い物語を聴いて理解すること」と「辛い物語を新たな視点から捉え直し,価値のある物語に書き換えていくこと」,そして「続きの幸せへと向かう物語を一緒に作っていくこと」だと考えている。 心療内科その他の心理援助機関に来談するクライエントは,うつや不安を抱えるに至ったそれまでの人生を悲観的に捉え,現在の状態に絶望しているように見える。それはまるで悲しい映画の主人公であるかのように。

          (1)人生の物語を作り直す支援