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素人が源氏物語を読む~間奏~:紫式部先生は地味回の花宴をなんで葵の前に置いたのか?

葵の巻は、正妻と愛人のバトルがあったり、光源氏と紫の君の大人の階段があったりと盛り沢山です。読むの、大変です。

書かないと読めない。だからせめて週1巻の記事を書いていく。という計画は頓挫したので、代案として間奏を書いていきます。

花宴と比べると、葵は有名かつドラマティックな場面が多いです。そして、この2つの巻の間に、御世替わりがあって空気が全然違うものになっています。

葵は、面白いなあ。それにひきかえ、花宴なんて地味な回を、紫式部先生は何で書いたんだろ。「先生、紅葉賀みたいな雅な世界、もっとちょうだい」当時の読者の、そんなリクエストに応えるため? それにしちゃ地味な感じなんだよなあ。

先生さぁ、なんでこの巻を書かれたの? うわっ、不躾。でも大丈夫です、先生は、不肖素人読者の質問なんかはガン無視です。仕方ないので、無い読解力を振り絞って読んでいきます。

本は読むけど読解力は無い。何の因果か読書に苦労しそうなタイプですが、別に競争じゃないし、やることと得意なことが噛み合わないなんてよくあるので気にしない。Don't worry, be happy.

読んでいくと「花宴が置かれた効果はこんなとこにもあるのか」と思えるようになったので、それを書きつけておきます。

■紅葉賀から3ステップで御世替わり

紅葉賀の「ザ・帝の御世」って雰囲気と、花宴の譲位近そうな雰囲気とは全然違ってた。紅葉賀でホップ・花宴でステップ・葵で次の御世にジャンプが終わってるってのは、ちょっとカッコイイかも。

先生、そういうことですか? 残念、先生は無言のままでした。

■この世界にはトランスする人がいる

夕顔では、源氏物語の世界では人が物の怪に憑かれたりすることが示されました。それでは、いつやってくるか知れないのは物の怪だけなのでしょうか。

花宴では、光源氏と朧月夜はトランス状態で出逢って、たちまちに性愛を果たしたように見えました。性格を差し引いてもあの時の2人は理性を欠いているし、といって衝動的というには緩やかに流されていたので、彼らはトランス状態にあった、というように読みました。

葵の巻では、ついにレディ・ロクジョウの素性が明かされます。それどころか、いっきに生き霊を飛ばすとこまで行くのです。ドラマチックや。

この女もまた、トランス状態になって生き霊を飛ばしたんではないかなあ。たとえば宴の酔いとかでトランスに入れるなら、極度の煩悶からだって乖離して記憶に残らない時間を持てるでしょう。あるいは、消せない護摩の匂い、そちらこそが幻の嗅覚なのかもしれない。いずれにせよ、惑乱してます。

いきなり生き霊飛ばす女が出るより、前の巻で、ひとはトランスするよね、ってことを共有しといたほうがリーダブルだ。

先生、そういうのも、狙ったの? 相変わらず先生は無言です。

■紫の君の初夜のショックを引き立てる

紫の君は色恋のことを全く知らない状態で光源氏との初夜に至ります。

いやあ、花宴とか読んでると、ぶっちゃけ長期放置もあったし、紫の君もどっかの誰かのガールになってんじゃね? という懸念がわいてきます。

処女にしてファム・ファタルだった朧月夜からの、葵上の出産を挟んでの、紫の君のショックな一夜。2人の少女の両極端な反応、違いに引立てあう。ドラマチックじゃないですか。末摘花もそこに入れてもいいけど、そうすると紫の君の拒絶が媚態めいてしまいそうで全国の紫上ファンの皆さまに申し訳が立たない気がする。

そういうことですか、紫式部先生? 予想はしてたけど、先生はやっぱり何も答えてくれません。

はあ~、わからんモン読むのって、ときどき孤独だ。確かにわからんけど、打ち捨てておくには惜しい、というのは知ってる。

それでは、また。

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