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長野WEリーグ2年目レビュー


WEリーグ2年目終了

女子プロサッカーリーグ「YogiboWEリーグ」の2年目、2022-2023シーズンが終了しました。
AC長野パルセイロレディースは昨年と同じく、全11チーム中7位という成績。
5勝6分け9敗 勝ち点21 得点21(+6)/失点25(+1)/差-4
得失点の後ろのカッコは前年比です。

今シーズンは、リーグ戦12試合(アウェー3試合)と皇后杯1試合を現地観戦しました。仕事で到着したのが後半ロスタイムだった広島戦と、別試合からの移動で後半途中からの観戦だった浦和戦を含めると、ホーム10試合全てUスタに行っていたことになります。そんなに行ってたか笑。

シーズン通しで振り返ってみると、リーグ戦前のリーグカップはグループA首位まであと少しの2位(勝ち点並んで得失点差)。大いに期待されました。
開幕戦はアウェー埼スタで、4,604人の観客の中2-3と惜敗。内容的には浦和さんとの差はあったものの、長野県出身の若手2選手が得点したこともあり、それほど悲観するものではないと思ってました。
ところが、第2節のホーム仙台戦の前日に1名、当日に3名の新型コロナウイルス陽性判定の発表。

第3節アウェー千葉戦の3日前、11月2日には9名に拡大。

こんな状態で勝てる訳もなく(仙台戦は他の要因もありましたが)チームは第4節のベレーザ戦を終え開幕4連敗。第5節のノジマ戦でようやく初勝利、初勝ち点となりました。
中断期間を挟み、折り返しの10試合消化時点の順位は勝ち点5の9位。
その後は勝ったり負けたりの中、突然反転攻勢に転じた当時の最下位アルビレックス新潟レディースの勢いに呑まれ、3月にはホーム長野Uスタで、5月にはアウェー新潟で連敗。アウェーで敗れた第19節の時点で最下位との勝ち点差は1に。翌日、田代監督の契約満了と小笠原強化担当の退任が発表されました。

中断明けの3月以降、9節から19節までの戦績は3勝3分け4敗。契約満了というほどの悪さではないはず。が、傍目に見ていてもこの10試合の内容は正直言って良くなかったように感じました。一時期やりかけた3バックがあまり機能しなかったし、攻撃も特にホーム試合で消極的なプレーが目につく時期がありました。加えて、3強(浦和、ベレーザ、INAC)が対戦相手に含まれない中で負け越し、順位が近いノジマや新潟に負けたのも危機感を煽ることに。特に新潟相手の連敗は悪い意味でインパクト大。
そんな中でも勝ち点を12積めたのは、新加入の榊原選手や上田選手の活躍が大きいと思います。榊原選手は18才ながら即戦力として、個で勝負に行く姿勢が前面に出て高い確率で局面打開できる攻撃タレントとして台頭しました。上田選手は、アウェー仙台戦で観た時(先発、前半のみで交代)は、まだ周囲と合ってないなという感じでしたが、シーズン終盤には不可欠の戦力に。攻守にギリギリまで体を張るプレースタイルはサポーターの拍手喝采を受けるまでになりました。
そして、ラスト3試合の相手は浦和、ベレーザ、INAC。最下位転落まで予想された中、まさかの1勝2分けで勝ち点5を積み上げ、結局昨シーズンと同じ7位でフィニッシュ。浦和戦に勝利したのが一番大きかったと思いますが、アウェー西が丘でのベレーザ戦、1点差で負けている状況で、途中交代した榊原選手が笑顔で引き上げてきたのを見て、新潟に負けた時とはチームの状態が全く違うなと思いました。

選手個々のデータ上位を見てみます(以下表内は敬称略)。

出場時間(1,000分以上出場)
ゴールランク
アシストランク

※上記表内灰色枠はシーズン終了後移籍・退団・引退した選手。
※アシストは公式記録から抜粋。

こんな感じでした。
観客数は、昨シーズンが平均1,175人だったので、平均で比較すると92人減っていることになります。優勝決定の可能性があった浦和戦ではレッズレディースサポさんが多数来場したのと、調子が上がってきた最終戦がなければもっと減っていたかも。
天気が悪かった&男子チームの天皇杯県予選決勝と重なったとはいえ、ゴールデンウィーク最終日のエルフェン戦538人がシーズン最少入場者数。私もUスタ現地観戦しましたが、入場前からスッカスカでした。

さようなら

【退団】

  • 田代久美子監督(→浦和レッズレディース)

  • 小笠原唯志強化担当(→ノジマステラ神奈川相模原)

  • 瀧澤莉央(→SC SAND Frauen(ドイツ2部))

  • 肝付萌(引退)

  • 國澤志乃(引退)

  • 福田まい

  • 太田萌咲(→マイナビ仙台レディース)

  • 榊原琴乃(→ノジマステラ神奈川相模原)

田代久美子監督

前シーズンにヘッドコーチとして加入し、2022-23シーズン満を持して監督就任。前述の通り序盤に大きく躓き、年末から採用した3バックも機能したとは言い難かったものの、最後の3連戦で見せたチームが田代監督の体現したかったサッカーか。古巣浦和の最速優勝決定を阻止した後、コーチとして浦和復帰が決定。

小笠原唯志強化担当

ヘッドコーチや監督など様々な役職を担ってきた小笠原氏。WEリーグ元年に務めた監督では「カメレオンサッカー」を標榜し、相手に合わせた戦術を採用しつつ多彩なセットプレーを駆使。育成年代の指導にも携わった。ノジマのテクニカルダイレクターに就任。


瀧澤莉央選手

毎年恒例にはしたくない、リーグ優秀選手の退団。いや背番号10番は2年連続1年で退団か。今年は瀧澤莉央選手が海外挑戦。得点アシスト共にチームトップ、正に大黒柱。ズラタンかってゴラッソも広島戦で決めたり、最後の3強との連戦で1得点3アシスト。

肝付萌選手

入団以来、中心選手として活躍してきた肝付萌選手の引退。
ビックリはしましたが、大学でサッカー辞めようとも思っていたという話を聞くと、3年半長野でプレーしてくれたこと自体がありがたいです。ユニがX-girlだった頃はチームの顔として紹介される立場も経験。お疲れ様でした。

國澤志乃選手

パルセイロレディースサポの中では伝説になっている2016年INAC戦出場選手の中で唯一の生き残りであり、その試合決勝点を決めた選手であり、チーム最年長の國澤志乃選手。イタリア挑戦を経て復帰。最後はケガに泣かされましたが、お疲れ様でした。

福田まい選手

伊藤有里彩選手や風間選手を脅かす守護神候補として期待された福田まい選手。日体大時代はパルセイロレディースと数多く対戦したこともありプレーは何度も見ていましたが、今シーズンは謎の2ヶ月離脱もあり、先発出場1試合、リザーブ入り5試合のみでチームを去ることとなりました。

太田萌咲選手

伊藤めぐみ選手に続き、長野にやってきたアカデミーの10番太田萌咲選手。なで2優勝当時のプレーも見ていたし期待してたけど、その頃のようなチーム全体に好影響を与えるような動きは・・・。リーグ最終盤にその片鱗が見えてきたところでの移籍は残念だけど、仙台で頑張って。

榊原琴乃選手

サポの誰かが言った「(良い意味で)何でこのレベルの選手が長野に来たの?」その通りでした。榊原琴乃選手の加入早々の活躍が無ければ、最下位コースもあったと思います。これだけの選手を引き留めることが出来ない。嗚呼残念な長野。或いはこれも想定内?

残留選手の多さ

出場時間ランク上位を見ると、瀧澤選手以外は全て守備(GK+4バック)の選手。ここはほぼ固定だったと言えると思いますが、この5人が全員残留したことは大きいと思います。実は失点25は3強に次ぐ4位タイ(仙台と同数)で、それほど悪くはない。更なる連携の向上と弱点の克服が前提ですが、チームの基盤はそのままいじらずにいけるのは大きいと思います。
中盤から前にかけては、より一層の奮起を期待。退団した瀧澤選手を除くと得点もアシストも個人の最大値が「2」ってのは寂し過ぎます。

いらっしゃい長野

【新入団】

  • 廣瀬龍(監督)

  • 宮本華乃選手(←INAC神戸レオネッサ)

  • TANEEKARN DANGDA(←タイ)

  • NUTWADEE PRAM-NAK(←タイ)


フリーで獲得できたであろう宮本選手は、長野が声掛けるだろうなあと思ったら早目の獲得発表。仙台時代から熱心なサポが付いている人気選手という印象。
廣瀬新監督とタイ代表の2選手は、小笠原さんの退任で男女2チーム兼任となった村山哲也強化ダイレクターの色が強く出たように見えます。個人的には強化担当を男女兼務というのは大変でどちらかが疎かになりそうで反対です。廣瀬監督も女子チームの指揮は初めて。お手並み拝見といきたいところですが・・・。早速アクシデント。クラブの勘違いなのか予定変更なのか、タニガーン選手は8月上旬合流予定と書いてありますがこれを書いている8月16日現在、全く来日する気配がありません(インスタグラムを見るとまだタイにいる)。

数値で見る規模(2年目)

Jリーグでは毎年各クラブの決算を発表しているのですが、これに「女子チーム運営経費」が計上されています。これがイコールでチームの規模とはならないとは思いますが、Jクラブの女子チームである6チームのパワーバランスを窺い知ることができます。

上記画像の右端「規模」は「2022年度 クラブ決算一覧(先行発表)」からの数値引用

https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/club-r3kaiji_1_20230725.pdf

一番右に前年(2021年度)の数値を付けておきましたが、2021年度はWEリーグが秋に開幕したので経費は準備費用+半期分でしょうか。プロ化(15人だけど)による人件費高騰で、2022年度はどこも数字が跳ね上がっています。

長野も予算は4倍近くになってます。なってますが・・・。
他のクラブが軒並み2億円を超えているのに、長野だけ約1.2億。
INACは3~4億、仙台は広島と同程度と予想。
ノジマ、新潟、ちふれは2億前後と予想。
うーん、どう捻って予想しても予算規模は断トツの最下位笑。この規模で整えた戦力で2年連続7位なら、小笠原監督や田代監督は良くやっていたと言えるんじゃないでしょうか。
他のクラブが中断期間に温暖な場所でキャンプを張る中、長野は選手が練習場の雪かきとか美談でも何でもありません。部活じゃないんだから。半分とはいえプロチームらしく練習に集中させてあげてください。

営業部だけに直接の責任があるとは思いませんが、年々スポンサー数も減少&グレードも下がってきています。ユニフォームは、かつてマッチデースポンサーも行っていたAPINA(共和コーポレーション)さんが撤退したことで袖スポンサーが消えました。
入場者数が減ることで広告(看板やハーフタイム中のCMなど)を打つ価値も目減りしています。7年前のゴールデンウィークでは6,000人以上が広告に触れる機会があったのに、今年のゴールデンウィーク最終日は538人。スポーツ応援のつもりならともかく、広告出稿の場所として見れば価値は7年前の10分の1以下。スポンサーさんも広告出しにくいでしょう。
ここ数年、コロナをダシにして色々なもの(こと、人)を雑に扱い、ほったらかしにしてきたように思います。その前からかもしれませんが。チームの存続や存在意義に関わる部分、もっと大切に育ててほしいと願います。

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