教師にとって抵抗となるような主体性を子どもたちに育てる ― 学習集団の授業づくりが目指していること
日々読書‐教育実践に深く測り合えるために
岩垣攝・豊田ひさき編・解説『学級の教育力を生かす吉本均著作選集 授業と学習集団』明治図書、2006年。
学習集団づくりによる授業では、授業の中でわからないことがあれば、「わからない」と発言し、授業の進行にストップをかけ、教師の説明にやり直しを求めなくてはならない。授業は、教師と子どもたちの対決のプロセスであり、教師と子どもたちがともによりよい方法を決めてきたのである。
「よくできる人たちのグループばかりにあてないで、全体を回ってほしい」とか、「黒板に書くばかりしないで、説明をもっと加えてほしい」とか、教師の指名の仕方に対して「もっとグループで話し合ってから答えるようにしてほしい」とか、授業における教師の指導法に対して、子どもたちが改善を要求するのである。あるいは、授業で学ぶ内容に納得がいかないときは、「おかしい」と発言し、疑問を出し合い、内容をあらためて検討し直すことを教師に求めなくてはならないのである。教師にとって抵抗となるような主体性を子どもたちに育てているか。授業をごまかさない集団的な力量を教師が子どもたちに育てているかが問われている。
授業のなかで、さまざまな考えや意見をつぶやいても、教師に取りあげられなかったり、教師があらかじめ用意していた答えが出てきたときにだけ、子どもの発言が教師に取り上げられて板書がなされたり、用意している答えが出なければ、「ほかに?」と言って用意している答えが出るまで、指名が続いたり、そうした教え込みの授業を経験してきた子どもたちに、どのようにすれば授業における教師の指導法に対して、子どもたちが改善を要求するようになるのか、あるいは、自分の答えが誤答だったとき、正しい答えは説明されたけど「なぜそうなるのか」「自分の答えはどうして間違ったのか」がわからなくて、ただ自分の答えを消しゴムで消して、正しい答えを書き写して授業が終わってしまった経験をしてきた子どもたちを、 「なぜそうなるのか」「自分の答えはどうして間違ったのか」を説明するよう要求できる子どもたちにどのように育てるのか。教師にとって抵抗となるような主体性を育てる方法が、学習集団の授業づくりには求められている。