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挨拶

 「子どもたちが、自分から挨拶すること」に取り組んでいる学校がある。

 「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」といった、人に会ったときに言う挨拶のことばは、相手の存在を無視しないために行われる。

 「いただきます」「ごちそうさま」も、時間やいのちをいただいているという意味で、人の存在を無視しない言葉である。

 そうした人の存在を無視しないことばは、使うタイミングが決まっているので、子どもたちも、いつ言うかがわかりやすい。それに対して、「お願いします」「ありがとう」「ごめんなさい」といった、人との関係を無視しないためのことばは、状況に応じて使うので、いつ言うのかが難しい。

 「子どもたちが、自分から挨拶すること」に取り組んでいる学校は、校門でのあいさつ運動ではなく、「お願いします」「ありがとう」「ごめんなさい」も含めて、子どもたちが日常的に人の存在や関係を無視しないことばを使えるようになることに取り組んでいた。

 「お願いします」は、相手に何かをお願いする時に使う言葉であり、「ありがとう」は、相手の行為に感謝の気持ちを伝える言葉であり、「ごめんなさい」は、相手を傷つけてしまった自分のあやまちを詫びる時に使う言葉である。いずれも、相手を思っているときに出てくる言葉であり、相手との絆が生まれるものである。そうした意味でも、「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」も、相手の固有名詞とともに使えたり、もう一言付け加えることができるようになると、友好関係を維持するといった社交辞令ではなく、関係をつくり出したり、関係を積み重ねていく言葉になる。

 「お願いします」「ありがとう」「ごめんなさい」も含めて、考えや気持ちを表すしぐさである身振りを、子どもたちが日常的に使えるようにする。挨拶という言葉に収まらない身体技法を子どもたちに育てようとしているのである。

 「ごめんなさい」は、人との関係性が左右するので、なかなかできるようにはならないが、教師も含めて素直に即座に言えるようになるといいなと思う身体技法である。

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