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日々読書‐教育実践に深く測りあえるために

坂口恭平『よみぐすり』東京書籍、2022年。

 本書は、死にたい人からの電話を受けている坂口さんが、電話を受けた後、たびたびTwitterでどうすれば死なずに済むかということを書きまくってきた言葉から、編集者が厳選してまとめたものである。
 
 本書には、「子どもが自殺するのは、生き延びるための楽しいとっておき技術の伝達が途絶えているからだ。」「死にたい人のほぼ九割くらいが、お金がない、っていうのが理由のようです。現場からは以上です。」といった自殺の問題を考えるヒントもちりばめられている。

 坂口さんの『継続するコツ』を読んだ後に本書を読んだので、次のような継続するコツにも目が留まった。

・私には才能がない。これができないあれができないという人は、そもそもこれもあれもやっていない。できるようになる唯一の簡単な方法は、それを毎日やることだよ。
・人から一切褒められなくて継続するコツは、「朝の日課」、「掃除」と同じくらいのレベルに創作を日常化させること。そうすると、やらないと気持ち悪い、やるとむちゃ清々しくなるかた、どんどん続くよ。人からの評価を待ってると日が暮れるよ。
・無能であることに気づいていない人は、毎日自分が無能だと嘆くが、無能であることに気づいている人は、毎日同じことを繰り返し練習して、少しでもできるようにする。嘆きとは、自らを有能だと勘違いしているために発生する残念な結果との落差なので、嘆けば嘆くほど結果は辛いものになると自分に言い聞かせてる。

 『継続するコツ』(坂口恭平、祥伝社、2022年)を読む中で私が気づかなかったのは、作口さんが作品を自己表現ではなく、時間の発生と捉えている点である。作品は、自分も知らないものが出てくる瞬間であるという。

 私に響いた言葉は、2つある。一つは、以下のとおりである。

・ みんな欠点を直そうと努力するの大好き。おれ興味なし。欠点はあなたのまわりの人があなたを助ける隙間となる。だからできるだけ直さないで、人に助けさせてあげて~。あなたがやるのはただひたすら長所を伸ばすこと。それが誰かの欠点を補う素敵な力になるよ。(118頁)

 まわりの人が自分を助ける機会となる愛されることが短所であり、長所は誰かの欠点を補うすてきな力である。長所と短所を関係性でとらえている。坂口さんは大人になることは子どもを消すことではなく、大人にもなるということだとも言う。息子には、自分でできないことは助けるが、自分でできることは自分でさせている。人が助けたくなるようなできないことを大事にできているか、人の助けになるところまでできることを高めているかを考えるきっかけになった。

 もう一つは、次のようなものだ。

・ 中1の娘のアオは昨日の個展で、かなり稼いだのだが、それで一応聞いた。「人生は金だなと思った?」と。「いや、そんなわけじゃないけど、楽しいことは確か」と言った。「ちゃんと自分で稼いで、困っている人がいたらご飯くらいご馳走してあげなさい」と伝えた。アオはうなずいた。
 我が家はこのスタイルで、いく。

 子どもにやりたいことをとことんしろというのは、そうしないと人を助けられないからである。人を助けるには、自分が比べるものがないような、継続してきた一つの楽しいことにあふれている人間でないとできない。我が子が人のこころを暖かくできるように成長するためには、継続している楽しいことを我が子が選べているかどうかだという指摘がじんわりと響きました。

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