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「ICT活用」と「深い学び」は、手段と目的の関係ではない

日々読書-教育実践に深く測りあえるために

小柳和喜雄「GIGAスクール構想とICT活用による集団的な学びの組織化」深澤広明・吉田成章編『学習集団研究の現在Vol.4 授業研究と軸とした学習集団による学校づくり』渓水社、2023年、28‐37頁。
 
 ある学校の研究主任から、ICT活用と深い学びが学校の主題研究になっていて、公開研究会も控えている、どのように研修をすすめていけばよいかと相談があった。この相談には、子どもたちに深い学びをもたらすために、ICTをどう活用すればよいかという考えが含まれていた。
 子どもたちに深い学びをもたらすために、教員がどのように授業でICTを使うのかと問うのではなく、一年間を通して子どもたちにどのようなICT活用を身に付けさせていくのかを先に考え、そうした子どもたちのICT活用に対して、教員がどのような指導性を発揮すればよいのかを研究した方がいいのではないかと、私は答えた。
 小柳和喜雄さんは、「教員として授業でICTを使う使わないという問題ではなく、児童生徒がICTを使って学ぶ機会を教員として保証(ママ)できているかどうかが問われている」(30頁)と指摘し、GIGA端末を「教具」や「学習具」として用いるのではなく、「コミュニケーションの道具」や「振り返りやアセスメントの道具」として、さらに学習環境としてとらえていく視点が意味を持つようになったという。
  GIGA端末のある学習環境のなかで、子どもたちを使って一人ひとりの考えを、文字、記号、絵、動画など多様な情報様式で端末に表現させることが可能となり、それをみんなで共有することがしやすくなっている。手を挙げて発言することが苦手な子どもも自分の考えを選択肢から選んだり、端末に記述、表現したり、学習活動に参加しやすくなっている。教員にとっても、子どもたちが選んだことを瞬時にグラフ等で表示し、子どもたちの声を比較的短時間に確認できるようになっている。子どもたちが比較的容易に、答えの選択や自分の立場を示しやすくなることで、授業は理由を述べあい、聴き合い話し合いを始めたり、最初の考えを見つめたりする機会をつくりやすくなったのである。答えから始まる授業である。あるいは、GIGA端末は自分の学びの変化や履歴を、文字だけでなく、写真や動画などでも確認できるため、自分自身の発音や音読を撮影した動画記録を参照し、比較分析や自己評価ができるようになっている。
 GIGA端末のある学習環境のなかで、子どもたちは何ができるようになるのか。子どもたちがGIGA端末を使いこなし、授業への参加や問題への取り組みが容易になったとき、教師がどのような指導性を発揮すれば、子どもたちの学びを深めることができるのか。ICT活用と深い学びを手段と目的の関係でとらえるのではなく、子どもたちの二つの行為をつなぐ教師の指導性を研究してはどうかと考えたのである。

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