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子どもは親の好みを忖度する

 You Tube に、ランドセルメーカーのセイバンが制作した親子のランドセル選びのドキュメンタリー動画がある。「キミが好きなの、キミが選ぼう。」というメッセージを込めて作成されたものである。

 色とりどりのランドセルが並ぶ店で子どもたちが一人でランドセルを選ぶ様子を、親は別室のモニターで見守っている。

 親の予想通りのランドセルを、子どもたちは手に取る。親は、「やっぱり!」と嬉しそうにするが、「選んでもらったのは、自分が使いたいランドセルではありません」「保護者の方が選んでほしそうだと思うランドセルを選んでもらいました。」という事実が告げられる。子どもたちは親の好みをよく理解し、親を思いやる、せつない健気さが伝わってくる。

 次に、子どもたちに「本当に自分が使いたいランドセル」を選んでもらうと、キラキラした満面の笑みで子どもたちは即決していく。ピンクが好きだとお母さんが思っていた女の子は「青が好き!」という。パパが好きそうだとかっこいい黒を選んだ男の子は、白を選んでいる。みんなと同じ黒を選ぶかなと父親が思っていた男の子は、「ピンクのやつが好き」と、かわいい刺繡の入ったランドセルをまっすぐに指さした。

 セイバンによると、購入時に親が最も重視するポイントは、「子どもの意見や意思を尊重」だったが、購入後のアンケートでは、「親などの大人がブランド、デザイン、カラーを指定」している割合が圧倒的に多かったという。

 ピンクのランドセルを選んだ男の子の父親は少し戸惑っていながらも、「すごいすごい。似合っているよ」と声をかけていた。息子のランドセルは、「まあ、これでいいかな」という息子の声に妥協を感じて、宮崎の店舗では選ぶことができず、私の父の墓参りを兼ねて大阪まで買いに行った。ところが、息子は、私たちがすすめたランドセルはまったく見向きもしなかったし、はっきりと「これは違う」と言い放った。でも、今、赤のズボンやピンクの靴下を好んで履いている息子を見ていると、ブランドや色はこちらの思惑に気遣ったのかもしれないなと思う。我が子の選択を肯定的に受けとめられるのか。我が子は大切に使う自分のものとしてランドセルを選びきったのか。多様性とは何かを考えさせられる動画だった。

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