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問題を発見するちから

 これからの時代に求められていることに、“イノベーション”がある。イノベーションとは、新しいアイデアから新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす変革のことである。現在の延長線上にないものをつくり上げていかなくては、企業も社会も成り立っていかないという。東日本大震災で明らかとなった原発問題は、ほとんどの人が予想していなかったし、共有できていなかった。私たちはこの世界に潜んでいる問題を、問題となる前にあらかじめ自分たちで見つけなければならない。また、貧困問題には、これといった解決策がない。私たちは、問題と向き合いながら、なんとか解決策をひねり出していかなくてはならない。「正解」はないけれども、「応答」をすることしか、私たちにはできないことがある。しかも、問題をきちんと受け止めることにすら、みんなで話し合ったり、考えたりしていく中で、自分なりに納得のいく応答が形をなしてくるまで、私たちは考え続けなければならない。
 今、必要とされているのは、「問題が起きたときに、どれをどう処理すればいいか」を考える「問題を解決する力」ではなくて、むしろ、「問題がどこにあるか、どのような問題なのか」を考える「問題を発見する力」である。たとえば、「既存の製品にある問題にどう対処するか」というのは、問題解決的な思考である。しかし、新しい製品を作っていく上で最も必要となるのは、「どこに問題があるかをどう発見するか」という問題提起的な思考である。こうした力がないと革新的な商品開発はできないと言われている。
新たなチャレンジを根気よくかつ効率よく続ける試行錯誤の力が、未来を生きる子どもたちには求められている。でも、イノベーションとして求められているのは、誰もが思いつかないひらめきを生み出すことではない。ここで言う問題提起的な思考とは、思いつきやひらめきのことではなくて、既存の要素を十分に吟味して、新たな組み合わせを発見し、これまで見えていなかった新しいモノサシをつくる力のことである。
 子どもたちには、努力する前に、自分の方法を見直し努力のあり方そのものを工夫することが必要となる。仕事は、ただひたすら努力して正解を導くことではなくて、努力の仕方を工夫して問題を見つけ出すことなのである。

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