ゲンガーになりたい女の子の話

六畳半の蒸し暑い部屋で
わたしは自分の価値を決める文章を打つ
ただ無心に、思い浮かんだことをひたすらと
わたしはタイピングマシーン

機械にできない仕事をしなさいと言われても
いまこの瞬間が機械みたいなもんだからさ
今更ニンゲン様になんてなれないよ
特技も学も美貌もない、ただ生きているだけ

描いていた夢ってなんだっけ
それに気づいてしまった頃から
夢にまで愛想尽かされたようだ
わたしはもぬけの殻になってしまった

バイトもできなくて
課題をこなしてゲームをして
どんなことがあっても完全な悪にはなれっこなくて
それでも日々課題は増やされて

しばらく人と会ってないし会えないし
なんだか最近息が浅くて常に苦しいし
夜は死神に会いたくて寝れないし
だから時間ギリギリまで眠りを貪っている

世界を変える主人公しか求めてない就活から
故郷を出た日から変わらぬ期待から
恋人同士の記念日を祝うコメントから
生きることから

全力で逃げている

わたしは無力だ
わたしは金食い虫だ
わたしはバカだ
わたしはわたしが分からなくなってしまった

プレイリストから流れてくる歌は
お前は孤独じゃないだろ、と問いかける
これのどこが孤独じゃないの
わたしは分からなくなってしまった

欲しいと心の底から願った、行動した
でも神様は許してくれなかった
前世で何かしてしまったんだろう
わたしは孤独の中で生きるしかなくなってしまった

こんなわたしがいなくなっても
誰も得もしなければ損もしない
害虫が減るだけ
もし生まれ変われるなら

自分を支えてくれる人がずっと隣にいて
何か素敵な特技があって
笑顔が素敵で愛嬌があって
誰からも愛されるような

そんな、ピカチュウになりたい
そう思うくらい許してよ

わたしは今日も苦しみながら
ゲンガーになることを望んでいる

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