桃色の月が笑う夜

君はあの日笑っていた
残酷なほど無邪気で か弱い笑顔
漆黒に染まった空へ
神様が一滴 桃色の雫をこぼした
ねぇ、もし
なんて可能性論を語るのはよそう
カフェオレ片手に夏のベランダ
生ぬるい空気が 僕を誘う

この声が枯れるまで好きだと言ったら
君は困った顔しかしないだろう
でもそんな顔をさせたい

僕に隠れて 小さく震える君
その手を握って僕の歯車の上に
ね、僕も震えてる
誰だって怖いのさ
運命を壊すのは勇気がいる

もし僕のありったけを使って
君への想いを表現するなら
きっとそれは 何よりも醜いもの
やっぱり見せるのはやめておこう

桃色の月が笑う夜
不気味なほど静まり返った街
僕のすすり泣きだけが
嘘だらけの大気に溶け込んでいった


草案:2017年夏 完成:2017年秋

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