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リブランディングの舞台裏③ーーこれまでとこれから

顧客体験のこれまでと在るべき姿・これからのGENERAL PEARL

「真珠加工大卸」として、40年以上にわたって真珠の美しさの追求と真珠業界の発展に貢献してきたGENERAL PEARL。そんなGENERAL PEARLがリブランディングに着手し、あらためて、“芯から愛せる本物”を届けるべく、新たなスタートを切った。すでに改装を済ませたショールームやブランドサイトを筆頭に、今後も段階的にコミュニケーションのアップデートを予定している。なぜリブランディングすることに至ったのか?これからどう変わるのか?、背景にある思いや試行錯誤について、ゼネラル真珠株式会社 代表取締役の井口己征と、broom inc. 代表・クリエイティブディレクターの井本拓夢との対談をお送りします。

三幕構成の【後編】です。
ここでは、顧客体験のこれまでと在るべき姿、これからのGENERAL PEARLについて語りました。




顧客体験のこれまでと在るべき姿


ーーショールームやブランドサイト、コーポレートツールなどはすでにリニューアルを行い、運用が始まっていると思いますが、このあたりはどうやってカタチにしていったのでしょうか?

井口:
個別の話は別の機会にするとして、全体的な流れについて話すと、
はじめに取り組んだことは、現在の顧客体験全体をリストアップし重要な接点を見つけ出すことでした。
この作業にあたっては、broomさんと弊社社員たちを含めたワークショップの開催を提案いただき、各自の異なる視点を網羅的に回収していったのを覚えています。
社員同士が互いに違う視点を手に入れ、
そして僕自身も顧客接点を見つめ直すきっかけを得ることができました。
こういう社員全体参加のブレインストーミング自体が初めてだったので、新鮮な感覚でしたね。

井本: 
ワークショップやってよかったですよね、
成果としてもそうですけど、純粋に楽しかった(笑

井口:
みんな楽しんでましたね(笑
そこで抽出された重要な顧客接点を見てみると、自分たちが一貫した顧客体験を提供できていないことや、顧客体験に強弱がないことに気付きました。
なんだかサビの無い歌のようで、盛り上がるところがない感じというか。

そうして課題がある程度具体的に見えたことで、
どこに投資すべきなのかが明らかになり、目先1〜2年のタスクが一気に描かれていったのを覚えています。

井本: 
お客様の心をどう動かすか、実際やってみないとわからないことの方が多いけど、仮説を立てることが大切だと思います。
実施すること自体に意義のあることや、効果が見込めることにフォーカスしてアクセルを踏めるし、
うまくいかなかった場合もまた、立てた仮説を元に振り返って考えられる。
この時、優先順位も決めましたよね。

井口:
優先順位については、後半の接点となる部分から着手していくことにしました。主には、ご購入後にお客様が手にする各種アイテムなどです。

例えばウェブサイトやショールームなどご購入前の接点を先行して取り組んだ場合、購入までの印象は良くても後の印象が続かず、最終的に顧客体験がしぼんでしまいます。
当然この方が早期に売上に繋がっていくのですが、一時的とはいえ顧客体験をないがしろにはできません。
また、集客のためのマーケティング関連タスクも後回しにしました。同じ理由です。マーケティング上手な会社は見た目は良いですが、中身を伴わないものは僕の性分にはあいません。

しかし、当然営利企業なので全く回収を度外視した計画にもできません。
細かなタスクにおいては、売上への影響度合いを鑑みてステップを割り振っていきました。
なので、タスクの優先順位については、
制作の都合を加味しつつ、顧客体験をしっかりコントロールしながら計画を作成した記憶があります。

井本: 
この計画においても、お客さまを第一に考えるGENERAL PEARLの良さが活きていると感じました。
売り上げを優先する気持ちはとてもよくわかるし、状況によってはそうせざるを得ないって場合もあるとも思うんですが、「そもそもブランディングへの取り組み自体が目先の話ではないはず」とこうした計画自体に介入する事案も少なくないので、井口さんの心意気に敬意を表するというか、ブランディングという大きな括りの中でも、こういう部分はぼくらがリードするより井口さんにお任せするのがいいなと純粋に信じられるというか。

井口:
そう言ってもらえて光栄です(笑
そして出来上がったのが、おおまかに全3フェーズに分かれたリブランディング計画でした。

フェーズ1は、アイテム。
弊社製品をお求めになられたお客様が手にされるモノ一式です。
フェーズ2は、販売チャネル。
店舗やWEBサイトといった、体験を提供する重要な基盤・経路です。
フェーズ3は、マーケティング。
発展に向け広く認知してもらうためのフェーズです。

出来上がったものから順々にリリースしていってるのですが、
正式ローンチは、当初よりフェーズ2あたりが妥当と考えていました。
今回、ショールームリニューアル、そしてブランドサイトをOPENしたことをきっかけに、こうして発信の場を設けるに至りました。


個々の立ち振る舞いは全体感と共に


ーー進行する優先順位やロードマップがあるとはいえ、段階的に進めていくことで、個々のコミュニケーションが"ぶつ切り"になったりはしないのでしょうか?

井本: 
鋭い質問ですね、そうなると本末転倒なので、"個々"を詰める前に、
タイミングで言うと、ワークショップを経て、提供すべき顧客体験についての仮説が立ったあとすぐ、ブランドとしての立ち振る舞いの全体感をつかむための草案をつくりました。

ブランドとしての立ち振る舞いの全体感をつかむための草案

井本: 
CGベースでの草案とはいえ、はじめていろんなコミュニケーションが目にみえる状態になったので、「Webサイトはもっとこういう方向性がいいね」とか、「ショールームはこうだよね」「もし展示やポップアップをするなら?」「配送パッケージやツールは?」といった具合に、議論も弾みました。
この時多分、みんなが一番テンション上がってた瞬間じゃないかな、と(笑)。どうでしょう?

井口:
これを見た瞬間は衝撃的でした。一気にブランド像がはっきりした瞬間です。テンションが上がる、よりも遥かに大きな衝撃を感じましたね。
これまで僕たちが培ってきたすべてがこういう形で昇華し世に出ていくんだ、って実感しましたね。

井本: 
GENERAL PEARLにも、ECやWEB、SNS、実店舗、など様々なチャネルがある中で、
お客さまはそれぞれの入口からそれぞれの体験をするわけなので、
接点ごとに提供する内容がチグハグだと、「どれが本当のGENERAL PEARL?」と疑念を抱くと思いますし、
逆に、どの接点でも、似た内容や単にフォーマットに当てこんだ見た目で展開してあると、それはそれで退屈に感じるとも思います。

だからこそ、分布する接点を個別のものとせず、
全体感を俯瞰しながら一貫性のある立ち振る舞いを計画することが、
やはりとても重要だと思うんですよね。

それに、そういうプロセスを経ることで、計画を進めるぼくら自身が、
一番はじめにフルパッケージの体験を浴びる、ある意味での顧客第一号なわけですから、
自分たちがワクワクしながらつくるということも大切にしたいです。

そういう意味では、すでにリニューアルを経て世に出ていったものはとても腑に落ちているし、
これからのブランド開発はより一層楽しみなものになるな、と。

井口:
この一貫性というワードこそ、ブランディングの最難関だと思うんですよね。作るだけじゃなく、検証し、しっかり保守・維持・発展していかなければならない。
世にある素晴らしいブランドは、これが実に徹底されている。
正直僕はまだその本質を全然理解できてはいないはずです。

ただ、たとえば自分がどこかのお店を利用した際、
あるいはサービスを受けた際に、ふと何かに「ここらしくないな」って感じる場面があったりします。
それはモノであったり、言葉であったり、役務の一部など様々ですが、
そういった感覚は一貫性の乱れに違いなく、
自社においては常にアンテナを張り、しっかり無くしていきたいなと感じています。

けど、やはりこれは客観的には気付けても、なかなか主観的には見つけづらいことですよね。
だからこそ、社内だけでなく社外の力を借りて、
常に正しく矯正する作用を効かせることが大切だと感じています。


これからのGENERAL PEARL


ーー自らを再定義するだけでなく、お客さまとの関係性を重んじた、リブランディングであることをとても感じました。さいごに、今後のGENERAL PEARLの動向を踏まえて、お客さまに伝えたいことなどあれば教えてください。

井口:
このリブランディングを経て、GENERAL PEARLは大きく変わっていきます。
しかし別の言い方をすると、全く変わらないんです。
僕たちはこれまで通り真珠と向き合い、こだわりの製品をつくり、誠意をもって販売しサポートしていく。
この内に秘めた僕らの思いや、行動原理そのものは、これまでと変わらずに歩んでいきます。

リブランディングを通して予想外だったのは、より一層自分たちに自信をもつことができたことでした。
これほどまでに真珠一筋でやってきたんだと、心から誇りに思えました。

今度は、僕らが創り上げた真珠製品をお手元にお届けし、
お客様の心を動かす番だと感じています。
GENERAL PEARLを通じて、お客様の心に新しい火を灯し、
一歩前に進みたくなるような体験を、これからもっと提供して参ります。
ぜひ、ご期待頂ければ幸いです。



アウトプットのご紹介

ブランドフィルム
Film direction, Edit : Takumu Imoto (broom inc.)
Video : Toshinori Suzuki
https://www.instagram.com/toshinorisuzuki/


ブランドサイト
https://generalpearl.co.jp/
Creative direction, design : Takumu Imoto (broom inc.)
Technical direction, front-end engineering :
Yoshikage Oba https://yoshikageoba.com/


ショールーム
Creative direction : Takumu Imoto (broom inc.)
Spatial direction, design : Ryosuke Sakamoto (broom inc.)
Photo : Rico Okaniwa https://ricookaniwa.com/
日本空間デザイン賞2023 入選 https://kukan.design/award/2023_b04_0050/ 


ツール
Creative direction, design : Takumu Imoto (broom inc.)
Photo : Kohei Komatsu https://www.koheikomatsu.com/