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「あの白いヤツだ・・・」伝説となったガンダムとアムロ~機動戦士ガンダム 第32話「強行突破作戦」感想

シャワー室に行った連中

マーカー「援軍ですかね?また1機接触するモビルスーツあります」
ブライト「シャワー室に行った連中はどうした?」
マーカー「各デッキでメカの整備中です」
ブライト「フラウ・ボゥ、1機か2機発進させろ」
フラウ「誰にします?」
ブライト「体の調子の1番いい者でいい」
フラウ「ハヤトですか?」
ブライト「急がせろ」
フラウ「ハヤト、ガンタンク発進願います。各機は待機してください」

今回はジオンのモビルスーツの襲来から話が始まる。おそらくは前回のラストから10分程度しか経過していないと考えられる。

ブライトの「シャワー室に行った連中」という言い方がなんとも味わい深い。若干の苛立ちを醸す絶妙の表現である。

マーカーが「援軍ですかね?」といぶかしんでいるように、単騎でホワイトベースに接近するというのはそのねらいが分かりにくい。

ジオン側がどういう意図で単騎攻撃を仕掛けてきているのか、それはこの後判明する。

セイラの不調

ブライト「セイラ、少し横になったらどうだ?重力ブロックの部屋を使え」
セイラ「でも、敵が」
ブライト「スレッガー中尉も加わっている、少し休め。命令だ」
セイラ「は、はい、そうします」
ブライト「セイラの身体検査の結果は?」
ミライ「別に異常はないわ。いたって健康」
ブライト「そうか・・・」

第30話「小さな防衛線」でシャアと再開して以来、悩み続けているセイラ。今回も同様である。ただ、今回はセイラの様子がおかしいことに周囲が気づき始める。

下がっていくセイラはうつむいて、がっくりと肩を落とし、本当に不調そうだ。

モビルアーマー・ザクレロ

シャア「デミトリーが出たのか、あれほど止めておいたのに。なぜやらせたか?私の許可もなく」
マリガン「お言葉ではありますが、シャア大佐はトクワン少尉の仇討ちを止められました。それに、デミトリーは以前からモビルアーマー・ザクレロのテストパイロットをやっておりましたので」
シャア「聞いてはおらん!そんなモビルアーマーは」
マリガン「実用テスト前に放棄された奴です。しかしデミトリーは、ザクレロの拡散ビーム砲は・・・」
シャア「ここは我々の庭だと言った。ドレンのパトロール隊との接触も可能だという時に。わかった。お前達がトクワンを慕う気持ちはわかるが、気がすんだらデミトリーにはすぐ戻らせろ」
マリガン「は、ありがとうございます」
シャア「ただし、今後同じ事をしたら軍法会議ものだぞ、中尉」

今回の単騎襲撃は、ジオン兵デミトリーの独断での行動だった。前回モビルアーマー・ビグロのパイロット・トクワンの仇討ち戦である。

今回登場したザクレロはこんなナリである。うーむ、悪役キャラだ。

久々にドレンの名前が出てきた。ドレンといえば左遷前のシャアの部下として常に行動を共にしていたジオン兵である。実に第11話「イセリナ、恋のあと」以来の登場である。

ドレンとシャアのコンビが今回もホワイトベースを追い詰めるのか。

シャアは「ここは我々の庭」という。宇宙空間はジオンが制空権を握っており、連邦軍がおさえているのはルナツーくらいである。

ホワイトベースは見かけ上は進路を月にとっているので、ジオン軍の制空権内を航行しているわけだ。

第5話「大気圏突入」で、ジオン軍の勢力圏内に降下してからジオン軍と戦い続けたように、ホワイトベースは敵勢力内で孤軍奮闘する運命にあるようだ。

ガンダム・・・。

アムロ「速いな、さっきのと違うというのか?」
ハヤト「うわっ!ミ、ミサイルもあるのか」
デミトリー「こんなモビルアーマーのできそこないなんぞ、あと一撃で」
ハヤト「うわあっ!うわっ!」
アムロ「はずれたのか?当たらなかった?ハヤト、もってくれよ」
デミトリー「別のモビルスーツか、それにしちゃ速すぎる、このスピードいったいなんだ?き、来た!」
アムロ「うわあああっ!!」
デミトリー「ええい、うるさい奴だ!ん?よし、まずはあのできそこないから。いただき!馬鹿め、同じことをやる」
アムロ「間違いない、エンジンを直撃できたはずだ。こちらのコンピューターで簡単に動きが読めた。いったいどういうつもりで?」

ザクレロに対しハヤトがガンタンクで出撃。アムロもガンダムで出るがこれはいったい・・・。

Gファイターの後部とガンダムの合体型。ガンダムの下半身はGファイターの中に入っているのか、それともガンダムは上半身だけか。

ともかく、あまりカッコいいとはいえない。おそらくは玩具販売の大人な事情による登場であろう。

ただ戦闘力はなかなかのようだ。ガンダム(上半身)によるビームライフル・ビームサーベル攻撃とGファイターのスピード・機動性とを合わせた、宇宙戦闘向きの形態だ。ザクレロをあっさり撃破。

アムロのいう「こちらのコンピューターで簡単に動きが読めた」というのは、ザクレロはテスト段階のモビルアーマーで動きが単純なため、ガンダムのコンピュータで容易に分析できたということか。

なお、この戦闘でガンダムは右腕を損傷するが、それが後ほどガンダムの出撃の遅れの伏線となっている。

「生意気だね、お前」

スレッガー「どうした?立て続けの出撃で疲れたのか?」
アムロ「いえ、ガンダムの右腕がやられました」
スレッガー「しかし、当面の敵は片付けたんだ。あせる必要はなかろうて」
アムロ「中尉はシャアという人を知らないからそんなこと言うんです。あの人、すぐに次の手を打ってきます」スレッガー「うん、ブリッジでも二言目にはシャアだな。そんなにすごいのかよ?」
アムロ「変わり身が早いんです。自分からモビルスーツに乗っても来る、すごい人です」
スレッガー「会ってみたいもんだな、そのシャアにさ。もっと休んでなくていいのかい?」
セイラ「え、ええ・・・アムロ、休みなさい。私がここにいるわ」
アムロ「・・・すいません。ブリッジに上がってきます」
スレッガー「ヘヘ、セイラさん」
アムロ「中尉、主砲の方いいんですか?」
スレッガー「チッ、いいじゃねえか・・・」
アムロ「ブライトさんに怒られますよ、戦闘中です」
スレッガー「生意気だね、お前」
アムロ「はい」
スレッガー「じゃ、今度静かな時にね」
セイラ「ええ。・・・ことごとに兄さんか」

スレッガーも「赤い彗星」のシャアのことは当然知っているはずだ。ここでのアムロとのやりとりはシャアをかなり侮っているように感じられる。

スレッガーは、シャアのことを情報としては認識していても、実際に戦闘した経験は前回1回しかない。

対してアムロをはじめホワイトベースのクルー達はサイド7以降、シャアから逃げ続けてきた。その怖さを身をもって知っている。連邦軍でシャアの実力をもっとも知っているといっていいだろう。その認識の差が出た会話である。

そこにセイラが入ってきてアムロと交代。スレッガーがセイラをナンパしようとしたところでアムロが「中尉、主砲の方いいんですか?」「ブライトさんに怒られますよ、戦闘中です」である。

これにスレッガーが「生意気だね、お前」とド直球の返答をする。ガキの正論にナンパを邪魔され少々ご機嫌斜めのご様子だ。

シャアとドレンの挟み撃ち

ジオン兵A「キャメル艦隊のドレン大尉、出ました」
ドレン「お久しぶりです、シャア少佐。あ、いや、今は大佐でいらっしゃいましたな」
シャア「相変わらずだな、ドレン」
ドレン「は」
シャア「木馬を追っている。ちょうどお前の艦隊の位置なら木馬の頭を押さえられる」
ドレン「ご縁がありますな、木馬とは。わかりました。追いつけますか?」
シャア「ドレン、私を誰だと思っているのだ?」
ドレン「申し訳ありません、大佐。軌道変更!マイナス110!木馬を追撃するぞ!」

現在、ドレンはキャメルというラクダ味の艦隊に所属しているようだ。アニメで見ると3隻のムサイを率いている。階級も少尉から大尉に上がっている。

シャアの部下ということで一緒に左遷されたのかと思っていたが、昇進したものだ。

シャアの作戦は、ドレンのムサイでホワイトベースの前方を押さえ、合わせてザンジバルでホワイトベースを追撃、挟み撃ちにするというものである。

ザンジバルにムサイ3隻の合計4隻で襲撃すれば新造戦艦ホワイトベースといえども撃破できるはずだ。

作戦内容とは全く関係ないが、この2人の会話、久しぶりに会った先輩・後輩という感じで味わい深い。2人の信頼関係も存分に出ており見ていて清々しい。

「私は認められない、兄さんのやり方」

シャア「(アルテイシア、私はザビ家を許せないのだ。私の邪魔をしないでくれ)」
セイラ「私は認められない、兄さんのやり方」

シャアの目的はザビ家への復讐である。すでにガルマを亡き者にし、今もなお虎視眈々とそのチャンスを狙っているはずだ。

セイラはシャアのねらいに気づいている。しかし、セイラは「私は認められない、兄さんのやり方」という。

ジオン軍と連邦軍という敵と味方に分かれ兄妹が争うというなんとも皮肉な展開だが、それに加えて、兄妹で意見が食い違うという非常に複雑な展開になっている。

ただセイラが賛成できないのは「兄さんのやり方」であって、その目的そのものには否定的ではないようだ。

セイラもザビ家に対しては思うところがあるということだろう。

本筋とは関係ないが、このシーン、無重力なので本が浮いている描写なのだが、セイラの苦悩の表情のためセイラが念力で本を浮かせているように見えてしまう。ほんとどうでもいいが。

「私はどうしても生き延びたいんだから」

セイラ「ちょっといいかしら?」
アムロ「ええ、いいですよ」
セイラ「私ね、どうしたら早くいいパイロットになれるかしら?」
アムロ「セイラさんは今でもいいパイロットですよ」
セイラ「お世辞はやめてよ、アムロ。私はどうしても生き延びたいんだから」
アムロ「おかしいですよ、急に」
セイラ「・・・私だって、シャアぐらいと」
アムロ「無理です。そりゃザクタイプの時には僕でも戦えました。でも今は・・・」
セイラ「たとえ話よ、アムロ・・・。私があなたみたいならね・・・」

セイラは「どうしても生き延びたい」とアムロにいう。これはいったい何だろうか。

アムロもブリッジ同様、最近のセイラの変調に疑問を持ち始めた。もっともその意味するところにはまだ気づいていない。

まだ小さな違和感といった程度だが、こうした描写があとあとのストーリーにボディブローのように効いてくるはずだ。

ムサイ接近!

オスカ「1時の方向、30度上方に敵戦艦3隻、えーと、ムサイタイプです」
フラウ「ムサイタイプ3隻キャッチ、戦闘体制に入ってください」
ブライト「うしろにザンジバル、前にムサイか。強行突破しかないな。全員、第1戦闘配置だ」
ドレン「いいか、シャア大佐と同じ戦法をとる。リック・ドム6機とキャメル、トクメルは木馬に攻撃を掛けるぞ!(因縁浅からぬ木馬とガンダムか)各機、最大戦速!」

ホワイトベースがドレン率いるムサイの接近を察知した。ブライトは即座に強行突破を決意する。

攻撃態勢にはいったホワイトベースは実にかっこいい。

対するドレンはムサイからドム6機を出撃させる。前回シャアがとったのと同じ作戦だ。

スレッガー出撃

ブライト「フラウ・ボゥ、予備のGファイターにスレッガー中尉を」
フラウ「はい!スレッガー中尉、第2デッキ、Gファイターへ搭乗してください」

今回のホワイトベース側の体勢は、Gファイター2機、ガンキャノン、ガンタンクの合計4機である。のちほどアムロのガンダムも出撃する。

前回ただ一人ザンジバルに主砲を直撃させ、その腕前を見せつけたスレッガー、今回はGファイターで出撃である。戦闘機の操縦技術の方はいかがであろうか。

「暴れてさっぱりしてくる」

アムロ「気分はいいんですか?」
セイラ「大丈夫よ、アムロ。ザンジバルから発進したモビルスーツじゃないでしょ?気分がクサクサしてるから暴れてさっぱりしてくる」
アムロ「セイラさん、おかしいですよ?」
セイラ「そう?さっきより元気よ、大丈夫」
アムロ「・・・じゃあ、慎重に」
セイラ「生意気ね」

セイラもスレッガー同様Gファイターで出撃である。

アムロは「セイラさん、おかしいですよ?」といぶかしがってはいる。ここでセイラが「ザンジバルから発進したモビルスーツじゃないでしょ?」と言っている点が、セイラの心情を読み取るヒントとなっているのだがアムロがそれに気づく様子はない。

おとり作戦成功

ナレーター「その頃、南米のジャブローを発したティアンム提督指揮する地球連邦第2連合艦隊の一群が大気圏を突破、ルナツーに向けての進路を取りつつあった」

ゴップ「ティアンム艦隊は21時にここジャブローを発進する。そこで君達ホワイトベースは、その2時間前に発進してくれたまえ」
ブライト「2時間も前に、でありますか?」

第31話「ザンジバル、追撃!」

前回、おとりとしてジャブローを発進したホワイトベース。本体であるティアンム艦隊は無事大気圏を突破した。おとり作戦成功である。

ホワイトベースは本隊の2時間前に出発しているので、ホワイトベースが宇宙に飛び出し、ザンジバルと砲撃戦を繰り広げ、ザクレロを撃破するあたりまでの出来事はわずか2時間程度のことだったわけだ。相変わらずなかなかのハードスケジュールである。

戦闘開始

カイ「野郎!もっと引き付けるんだ!ここか!いけっ!やったあ!!」
スレッガー「ほう、見かけによらず、やることは冷静だな。見直したぜ。ん?待て」
カイ「し、しまった!」
スレッガー「やつら。おおーっ!」

いよいよ戦闘開始である。

ドムの先制攻撃をかわし、カイが砲撃。見事ドムを撃破。「やったぁ!」と無邪気に喜ぶカイ。

しかし、その爆発に隠れてドム2機が接近戦を仕掛ける。これはジェットストリームアタックか!?

この攻撃でスレッガーのGファイターが被弾。今回スレッガーの出番はこれでおしまいである。前回とはうってかわって精彩を欠く結果となってしまった。

対照的にセイラはビーム砲1撃でドム2機を一気に撃破。自分でおもわず「うまい」と言ってしまうほどである。

オスカ「第6ブロック被弾!4発目です!」
・・・
ブライト「主砲、メガ粒子砲はムサイのブリッジ、あるいはエンジンを狙え。撃て!」
ドレン「数を撃てばいいというものではない!よく狙え!」

カイとセイラで合計3機のドムを撃破。しかし、その間に別の3機のドムがホワイトベースに取り付いてしまった。

すでにミサイルの直撃を4発受けている。さすがにムサイ3隻、ドム6機との戦闘は多勢に無勢か?

ここにシャアのザンジバルが到着してしまえば、ホワイトベースは撃沈されてしまうだろう。

果たして!?

ガンダム出撃

アムロ「待たせました、ガンダム発進します」
ブライト「急いでくれ、目標はムサイだ。スカート付きのモビルスーツは構うんじゃないぞ!」
アムロ「了解です!行きまーす!!スカート付きめ・・・。チィ!」

いよいよガンダムの出撃である。

ガンダムの出撃がここまで遅れてしまったのは、今回の冒頭、ザクレロとの戦闘で右腕を損傷し、その修理に時間がかかっていたためだ。このあたり、ストーリーテリングが自然で、ドラマの作り方が実にうまい。

ブライトから「ドムには構うな」と言われているにもかかわらず早速1機のドムを撃破するアムロ。

ドレン「ああっ、ト、トクメルが。リック・ドム2機、後退させろ、こちらからの砲撃の邪魔だ!キャメル!スワメル2艦で木馬を仕留めるぞ!シャア大佐が来る前になんとしてもとどめを」
ミライ「ムサイ2隻、来ます」
ブライト「各砲撃手へ、狙いは左のムサイだけだ、右は忘れろ」

ここでホワイトベースがムサイ1隻を撃破。残るは2隻だ。

しかし、ホワイトベースもビーム砲の直撃を受ける。

「あの白いヤツだ・・・」

ドレン「なに!?聞こえない!」
ジオン兵B「ガンダムがいないそうです」
ドレン「あのリック・ドムは?」
ジオン兵B「フラシィのです。奴はガンダムを見てないと言ってます」
ドレン「馬鹿な、・・・ではどこにいるんだ?ガンダムは。うわっ!」

ドレン 「(そんなはずはない、ガンダムはいるはずだ。どこなんだ?)」
ジオン兵C「ドレン大尉!」
ドレン「何か!?」
ジオン兵C「ゼロ方向から接近する物あります」
ドレン「なんだ?」
ジオン兵C「モ、モビルスーツらしき物、高熱源体接近」
ドレン「ミサイルか?」
ジオン兵C「本艦にではありません!」
ドレン「スワメルか!スワメル!よけるんだ!うっ、ガンダムだ。あの白いヤツだ・・・。うっ。うおっ」

ガンダムが見当たらないことに困惑するドレン。

そこに「高熱源体接近」の報が入る。ドレンの「スワメル!よけるんだ!」という叫びもむなしく、スワメル艦は爆散。

ここでドレンは「あの白いヤツだ・・・」とガンダムの襲撃を確信する。

このシーンのガンダム・アムロの描写が実にいい。

まずは彗星のような白い閃光が宇宙空間に一筋現れる。

その閃光をクローズアップしていってガンダムの姿が描写される。

さらにクローズアップして、コックピット内のアムロを映し出す。このアムロ、目をあえて描かないことで無機質・無感情な印象を与えている。

最後にアムロの横顔である。アムロは無表情でまっすぐ正面を見据えている。

この一筋の閃光からアムロの横顔まで、情緒的な演出もなくセリフもない。ただ淡々と任務をこなすパイロットとしてのアムロを描いている。

第29話「ジャブローに散る!」でのウッディの言葉を体現しているかのようだ。

アムロ「僕がもっと、もっとガンダムを上手に使えればマチルダさんは死なないで済んだんですよね。すいませんでした」
ウッディ「うぬぼれるんじゃない、アムロ君!」
アムロ「えっ?」
ウッディ「ガンダム1機の働きで、マチルダが助けられたり戦争が勝てるなどというほど甘いものではないんだぞ!」
アムロ「で、でも・・・」
ウッディ「パイロットはその時の戦いに全力を尽くして、後悔するような戦い方をしなければ、それでいい
アムロ「はい」

第29話「ジャブローに散る!」

ドレンのムサイに一気に接近するガンダム。

ムサイのブリッジを一刀両断。ドレンは船外に放り出された。少々面長なガンダムの背後に、放り出されたドレンが小さく描かれている。

ラスト、ドムの横薙ぎがガンダムの盾を切り裂いたかと思えば、その下に隠し持っていたビームサーベルで太刀をかわし、見事ドムを撃破。

ザンジバル到着前に決着である。

サイド6へ

ブライト「それは確実なのか?」
マーカー「はい。ここからルナツーへ進路を取れば98パーセントの確率でザンジバルと接触します」
ブライト「うん。よし、サイド6に向かう」
スレッガー「賛成だな、少尉。Gファイターを傷つけてすまん。アムロ曹長にしかられたよ」
ブライト「手柄を急ぎすぎましたかね」
スレッガー「はははは、そんなところだな」
ミライ「でもブライト、サイド6に向かったってどうなるというものでもないし」
ブライト「このままザンジバルと戦ったとしても、勝つ見込みはほとんどないぞ」
スレッガー「そうだな。外から見てもホワイトベースのやられ方はひどいもんだ」
ブライト「気になる事でもあるのか?ミライ」
ミライ「い、いえ、別に・・・」
スレッガー「サイド6は中立サイドだ。戦闘行為は南極条約で禁じられているし、うまくいけばホワイトベースの修理もできる」
ブライト「その代わり、ジオンに取り囲まれる可能性もありますがね」
スレッガー「やむを得んさ。その時はその時さ」
ミライ「・・・まさかね・・・針路変更。ホワイトベース、サイド6へ向かいます」
ナレーター「サイド6。いくつかあったサイドのうち、ジオン公国にも地球連邦にも属さず、戦争には参加していない。また、このサイド6の支配下の空域では一切の戦いは禁止されていた」

行手を遮るムサイ3隻を強行突破し、挟み撃ちを免れたホワイトベース。しかし、その代償は大きかった。ミサイルやビーム砲の直撃を受け満身創痍である。

そこにシャア率いるザンジバルとの接触の可能性が出てきた。この状況ではザンジバルに勝ち目はない。そこで中立サイドであるサイド6に向かうことに。

「戦時中立国とは、国際法上の中立法の原則に基づき、紛争のいずれの側にも加わらず、双方に対して公平な態度をとる主権国家をいう。中立国はその領土や領域について交戦国によるいっさいの侵犯から免れる一方,交戦国双方に対して厳正に公平である義務を負う。たとえば,交戦国に軍隊,船舶,武器,弾薬,資金その他直接,間接に戦争に使われうる物資を提供したり,その領内を軍事基地や軍事的移動経路として使わせたりしてはならない。」

Wikipedia-中立国

Wikipedia情報は主権国家を想定した中立概念を紹介している。機動戦士ガンダムの世界のサイドは主権国家ではないので直接的な援用はできないが、サイド6の立ち位置を理解する上で大いに参考になるだろう。

スレッガーは「戦闘行為は南極条約で禁じられているし、うまくいけばホワイトベースの修理もできる」と言っているが、上記の中立概念からすると戦艦の修理や燃料の補給といった便益を受けることは中立義務違反になる可能性が高い。そのあたり、スレッガーの見通しは少々甘めである。

サイド6に向かう決定に対しミライが「でもブライト、サイド6に向かったってどうなるというものでもないし」と意見する。ブライトが「気になる事でもあるのか?ミライ」と聞いても「い、いえ、別に・・・」と歯切れが悪い。

ミライとサイド6とくれば婚約者である。

ミライ「フィアンセっていったって親同士の話よ」
ブライト「どこにいるんです?」
ミライ「戦争を避ける為にサイド6に逃げたとか。来るべきものが来たって感じね」
ブライト「ああ」

第31話「ザンジバル、追撃!」

ミライの奥歯に物が挟まったような対応は、前回ブライトの前でフィアンセの存在を暴露され、ブライトと微妙な空気になってしまったいきさつがあるので、サイド6に行けばまた何か起きてしまうのではないかという不安の表れか。それとも婚約者との間でもともと何かあったのか。次回、要チェックである。

なお、スレッガーがブライトを少尉と呼んでいるが、ブライトは中尉である。これは単純ミスだろう。

第32話の感想

今回、セイラの苦悩と、周囲がそれに気づき始める様子が描かれていた。シャアとセイラが今後どうなっていくのかまだ予想もできない段階だが、ここ数話で丁寧に伏線をはっているといったところであろう。

また、ガンダムの存在がジオン軍にとって無視できない存在となった回でもある。淡々と任務をこなすアムロの姿は、一切の感情が描かれないことでかえって不気味さを醸している。ジオン兵にとってこれ以上の恐怖はない。

ドレンがガンダムの姿を探しているところに「高熱源体接近」の報が入る。一筋の閃光がムサイに接近、あっという間にムサイ2隻を撃沈してしまった。今回のアムロの活躍は、シャアのルウム戦役での活躍と対をなすものである。

第2話「ガンダム破壊命令」で、シャアがホワイトベースに強襲をかけた際、パオロはルウム戦役でのシャアの戦績を引いて「逃げろ」と指示を出す。

パオロ「ルウム戦役で5隻の戦艦がシャア1人の為に撃破された。に、逃げろ。」

第2話「ガンダム破壊命令」

機動戦士ガンダムではルウム戦役については詳しく描かれていないが、シャアが「赤い彗星」として生ける伝説となった戦闘だ。

今回は、連邦の白いモビルスーツとそのパイロットが伝説となった瞬間を描いた回といってよいだろう。

さて、次回は第1話以来、アムロの父親であるテム・レイの再登場である。第1話のラストでサイドに空いた穴から宇宙に放り出されてしまったテムだが、どうにかこうにか生きていたらしい。

母親との再会(第13話「再会、母よ・・・」)はアムロの思春期の葛藤が見事に描かれていた。

アムロは父との再会で何を思うのか。そのあたりに着目してみたい。

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