発症年齢が若い成人喘息患者のアドヒアランスに注意? Asian Pac J Allergy Immunol 2020

今回は手前味噌ですが私たちの書いた報告を紹介します。


Asian Pac J Allergy Immunol 2020 PMID: 32563226

Risk factors for poor adherence to inhaled corticosteroid therapy in patients with moderate to severe asthma

http://apjai-journal.org/wp-content/uploads/2020/06/AP-311219-0731.pdf

・GINA step3-5(中等症・重症)の喘息患者において、吸入ステロイド(ICS)のアドヒアランス不良と関連した因子を自己記入式質問票のデータ等から解析

・アドヒアランス不良は「週に2回以上のICSの怠薬」もしくは「ICS連日吸入の必要性の認識欠如」と定義

・アドヒアランス遵守への障壁をAdherence Starts with Knowledge 20(ASK-20)質問票を用いて評価

・85人のうち19人(22%)がアドヒアランス不良・アドヒアランス不良群では良好群に比較して、喘息診断時の年齢が若い(中央値 [四分位範囲]: 10.0 [3.0-50.0] vs 41.0 [18.5-51.5] 歳, p=0.05)。

・ASK-20による評価では、小児期に喘息と診断された患者はそうでない患者に比較して「多剤の服薬に対する抵抗感」と「服薬回数の遵守」に関する項目で差異が見られた。


<個人的コメント>


今回の研究では対象患者の4割で喘息コントロール不良(ACT 20未満)であったにもかかわらず、2割以上の患者でICS服薬のアドヒアランス不良が認められました。

「重症だったら」「症状が毎日あれば」、ICSを吸い忘れたりすることはないだろうと推測してしまいますが、実際にはそうとも限らず、やはりコントロールが悪い場合にはまずアドヒアランスを評価することが大事だということがわかります。


この研究は時間断面研究であり、症例数も多くはなく、かつアドヒアランスの評価が自己申告ということから、多くの限界がある研究ではありますが、小児期に診断された成人の喘息患者さんほどアドヒアランスが悪いという結果がでました。


小児発症1型糖尿病などでは思春期において治療主体が親から本人に移る際にアドヒアランスが低下し、それが成人期まで遷延することが知られていますが(J Pediatr Psychol 2005. PMID: 15681311、J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 1992. PMID: 1429414)、喘息においてもアドヒアランスの落ち込みを防ぐための対策や患者さんへの教育が重要であると考えられます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?