医学生や研修医に聴診所見を伝えることはなかなか難しい。
「所見を共有できる聴診器があったらなぁ」と思い、調べるとそのような聴診器があるではないか!
早速、Littmann Classic Ⅱ S.E. Teaching Stethoscopeを購入した。

1つのチェストピースからのびたチューブが黒・赤2本のチューブに分かれてそれぞれ1組のイヤーピースがついており、聴診所見を他者と直接共有できる。

副雑音や正常肺胞呼吸音の減弱・左右差のみならず、聴取可能な部位が限局される胸膜摩擦音や、深呼気時の終末のみでしか聴取されない喘鳴までもが容易に説明できる。

COPDや喘息が増悪した患者とβ2刺激薬投与前後の聴診所見を共有して「空気の通り道が広がりましたね」と伝えたり、間質性肺疾患の患者に自身の捻髪音を「炎症で固くなった肺が広がる時の雑音は以前から悪くなってはいませんよ」と聞かせたりすることで疾患の理解の助けとしている。

一方、聴診は必然的にソーシャルディスタンスを侵す。
コロナ流行拡大期には皮肉なことに咳や発熱がある方ほど聴診が避けられた。コロナ禍で教育を受けた現在の研修医には十分な身体診察の修練を積めなかった者もいる。
特に大病院では画像を含む様々な臨床検査へのアクセスがよいため、それらに頼る診療になりがちだ。
しかし、逆にそのような時期を経て、画像や採血検査は聴診の代わりとはならないことを痛感している。

ルネ・ラエンネックが紙製の筒で胸の音を聴いてから200年以上が経つ。
患者の訴える病歴以外にも臓器から直接発せられる音を利用することにより、診断精度が上昇した。

私は最近、ステレオ聴診器であるKenzmedico Stereophonette No.171を購入した。
音が聞こえてくる方向がわかるのは新鮮だ。
また1つ1つの音が明瞭に聞こえるため、呼吸音の大きさの変化も捉えやすいように思う。

肺や心臓の状態を侵襲なくリアルタイムに評価できる聴診器は、今後も内科医の象徴と相棒であり続ける。

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