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ニケ… 翼ある少女:番外編「せーぎのみたかのにけちゃん③ にけちゃんはライバルね!」

くみは賢生けんせいと公園を散歩していた。

今日は賢生けんせいから陰陽道おんみょうどうの指導を受けたのだ。

くみはお礼にお気に入りの喫茶店に賢生けんせいを誘った。

仲良く祖父と孫娘が公園を歩いていると…

キコキコキコ…

「にけちゃん!」

「はっ!」

聞き覚えはあるが、あまり聞きたくない声にくみは振り返った。

「げっ、やっぱり…」

ちっちゃなくみちゃんだった。

「にけちゃん、きょうはおじいちゃんとデートなの?」

「そうよ、私のお祖父じいちゃんよ。」

くみちゃんは賢生けんせいの顔をじろじろと見た。

「ほっほっほ、誰じゃなこの可愛いお嬢ちゃんは?」

賢生けんせいが聞き、くみが答えた。

「ちょっと知ってる子なの。くみちゃんって言うのよ。」

「ほう… お前と同じくみちゃんか。可愛いのお。」

そう言って女の子の頭を撫でようとする賢生けんせい

「さわらないで、ぼけじいちゃん!」

するっと賢生けんせいの手をかわすくみちゃん。

賢生けんせいは苦笑いをしてくみの顔を見た。

「くみはあたちよ。このおねえちゃんはにけちゃんでしょ。」

賢生けんせい顎髯あごひげをしごきながら、

「確かにニケじゃが、おねえちゃんもくみっていうんじゃよ。」

「おじいちゃんは、だまってて!」

くみちゃんは賢生けんせいに怖い目をして言ってから、

「ねえ、にけちゃん。こないだのイケメンとはどういうかんけい?」

くみはムッとしながら、くみちゃんに答える。

「くみちゃんには関係ないでしょ。私の大切な人よ。」

くみちゃんはスカートのポケットから数枚の硬貨を取り出した。

「これあげるから、あのイケメンとわかれて。」

「ぶっ…」

くみは吹き出した。賢生けんせいも大笑いしている。

「たりない? いまこれしかないの…」

くみちゃんは悲しそうに言った。

「そうじゃなくて… お金は大事にしなさいね。」

くみはしゃがんでくみちゃんの目線に合わせる。

「あのお兄ちゃんはねえ、好きな人がいるんだって…」

くみちゃんはびっくりした目でくみを見た。

「ほんと…?」

くみはうなずいてくみちゃんの頭をでた。

「うん… 私にも教えてくれないんだあ…」

そう言って、くみは立ち上がった。

くみちゃんは泣きそうな目になって言った。

「にけちゃんもふられたのね… かわいそう…」

くみちゃんは泣きながらくみの脚にしがみついた。

「あーん、あたちたちふられたのね…」

鼻水をくみの美しいあしきながら、くみちゃんは言った。

「別に振られたってわけじゃないのよ…」

くみはもう一度しゃがんでハンカチであしいた。

くみちゃんの鼻もかんでやりハンカチを貸してやった。

「あのお兄ちゃんはねえ… とっても優しいのよ。」

くみは自分に言い聞かせるように言う。

「女の子を泣かしたりしないわ。」

くみちゃんは顔を上げて目を輝かせて言った。

「ほんとね? あたち、すてられたんじゃないのね?」

言いながらくみちゃんは、ズビビッとハンカチで鼻をかんだ。

くみは仕方が無いのでうなずいて答えた。

「そうね、大丈夫… なん…じゃないかな…?」

くみちゃんは元気よく立ち上がって三輪車に飛び乗った。

「じゃあ、にけちゃんはライバルね! まけないから!」

そう言い残して、くみちゃんは颯爽さっそうと去って行った。

「あーあ… 行ってしもうたぞ、くみちゃん…」

賢生けんせいはくみちゃんを見送って、くみに言った。

「しょうがないわよ、ちっちゃくてもやっぱり女の子なのね。」

くみはそう言いながら、去って行ったくみちゃんを見送った。

「あのなあ… くみや…」

賢生けんせいは気付いたが、言い出せなかった…

くみのスカートの尻にべったりとハンカチが張り付いていた…






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