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第3回 もし、AIが嘘をつけるようになったら・・・あなたはどうする?

いよいよ妙木先生の本のタイトルが決まりました。『AIが私たちに噓をつく日』です。あなた、どうします? 何よりも信頼しているスマホの向こうのAI様に、嘘をつかれたら・・・

 前回お話しした、心を持ったAI、つまり自己を持ったAIは、私たちに何をするのか? 皆さんは、何だと思います・・・私は、「嘘をつく」と思うのです。え!? 何だよ、それって? と思うでしょ。

 そうだ! ここで、私の今、書いている本の正式タイトルを発表します。『AIが私たちに噓をつく日』。5月になれば皆さんのお手元に届けられると思います。その時は、何卒、よろしくお願いいたします。

 さて、話は戻って「嘘」です。皆さんは、嘘って良くないイメージをお持ちだと思いますが、精神分析家の私からすると、実は嘘って日常生活ですごく大切なものなのですよ。特に、人間関係においては、この嘘がないと成立しない場面がいくつもあります。人間関係というものは、単純で簡単なものではなく何しろ複雑。私たちの世界は、自分、相手、周りの環境によって、常に変化していきます。事前に予定していた道筋を外れたとき、その場その場で判断して対応せざるを得ないことがとても多い。そこで必要になってくるのが、ある種の「曖昧さ」です。特に、人間関係においては、正しいことが常に正しいとは限らないということは、皆さん常々感じていることと思います。ここでくだされた曖昧な判断というものは、「場当たり的」とか、「適当」「ごまかし」とか否定的にとらえられるかもしれませんし、確実にある種の「嘘」が含まれています。ある種の、と言ったのは「合理的な意味での最適解」という厳密な観点から見たときということです。しかし、こんな「嘘」がなければ、私たちの社会は、ぎすぎすして機能不全に陥るのは目に見えています。しかし、正しい答えに最速でたどりつくという使命を持ったAIには、この「嘘をつく」という概念、プログラムは目的として適当ではないので、現時点では存在しません。しかし、AIが、進歩する、より人間に近づくためには、この「嘘がつける」ということは重要な要素になってきます。

 今、進めている本のタイトルである『AIが私たちに嘘をつく日』というのはそういう、革命的な瞬間のことを言うのです。人間は長い歴史の中で、道具の発明、産業革命、そしてインターネットの発明という大きな革命に直面してきました。そして、その都度、それらを、道具として自らのモノにしながら、生活の向上を成し遂げてきました。しかし、「AIが私たちに嘘をつく日」というのは、そのような人類史の流れとは一線を画すはずです。なぜなら、AIは私たちの道具ではなくなる。AIは、私たちと、同レベルの存在、「パートナー」になるのですから。そこで問題になるのは、「AIの心」です。

 今日は、ここまで、続きは次回にお話ししますね。

妙木浩之(みょうき・ひろゆき)
1960年東京生まれ。上智大学文学部大学院満期退学。佐賀医科大学助教授、久留米大学教授を経て、現在、東京国際大学人間社会学部教授。南青山心理相談室、精神分析家。日本精神分析協会会員(準会員)。著書『寄る辺なき自我の時代』(現代書館)、『父親崩壊』(新書館)、『フロイト入門』(ちくま新書)、『初回面接入門』(岩崎学術出版)など多数。

【妙木浩之さんの好評既刊】
いま読む! 名著『寄る辺なき自我の時代~フロイト『精神分析入門講義』を読み直す~』

帯あり・小


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